改訂新版 世界大百科事典 「キスツス」の意味・わかりやすい解説
キスツス
white-leaf rockrose
Cistus albidus L.
ハンニチバナ科の常緑小低木で高さ1mくらい。葉は楕円形または卵状楕円形で長さ5cmくらい,表面はビロード状をなし灰白色である。葉縁は下面へ巻き込み,表面には3本の葉脈が見られる。花期は5~7月。花は淡紫紅色または淡紅色で花径5cmくらいで大きく,花弁は5枚でわずかに波状を呈し優美である。花は,正午ころに全開して夕刻にはしぼみ,1日で終わる。和名のゴジアオイ(午時葵)は昔の午時,すなわち今の正午の時刻に咲くアオイに似た花の意味。
ゴジアオイ属Cistusの中ではこの種が最も花が大きく美しい。花の中心には多数の糸状のおしべがかたまってつく。原産地はイベリア半島南部から南フランス。ゴジアオイ以外にもムラサキゴジアオイC.villosus Lam.やその他の数種が観賞用に栽植される。いずれも地中海地方が原産地で,植物体には芳香があり,葉を茶として飲料にしたり,樹脂を香料にした。
ハンニチバナHelianthmum adanus(英名rockrose)もハンニチバナ科で花などは似ているが小さく株全体も小型である。鉢植え,植込みなどに使われる。繁殖は実生,挿木,取木による。用土は乾燥を好むので排水のよい砂まじりの土が適し,日当りのよい場所に植える。
執筆者:古里 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報