化学辞典 第2版 「キレート抽出系」の解説
キレート抽出系
キレートチュウシュツケイ
chelate extraction system
水-有機溶媒系で,水相中に溶存する金属イオンを親有機性の金属キレート化合物とすることにより,電荷を中和して有機溶媒に抽出する系である.一般に,生成キレートの安定度定数が大きく,抽出試薬の濃度が低くてもよいため,この系の抽出機構について平衡論的解析が多くなされている.有機相に溶解したキレート試薬HAにより,水相中の金属イオン Mn+ を抽出する場合,反応が次式
Mn+ + nHAo MAn,o + nH+ (1)
により進行するとし,分配比(D)が
で表されるとすれば(添字oは該当化学種が有機相に存在することを示す),
log D = log Kex + nlog [HA]o + n pH (3)
が得られる.Kex は(1)式の平衡定数を示し,抽出定数といわれ,分配比の対数,有機相中の試薬濃度の対数,pHから,nが定められ,抽出錯体の組成が推定できる.抽出pHの選択,マスク剤の利用などにより,分離の選択性を大きくすることができる.また,抽出されたキレートの多くは,可視部に光吸収を示すので,吸光光度定量に利用される.キレート試薬としては,ジチゾン,オキシン,ジオキシム類,TTAなどのβ-ジケトン類などがある.低濃度抽出剤の使用は,微量金属分離や定量の面で特徴を示すが,他面,大量の物質の分離には用いられない.[別用語参照]イオン会合抽出系
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報