改訂新版 世界大百科事典 「クサゼミ」の意味・わかりやすい解説
クサゼミ (草蟬)
半翅目セミ科クサゼミ属Moganniaの昆虫の総称,またはそのうちの1種を指す。この仲間はその名のとおり,多くの種は樹木(木本類)でなく,ススキなどイネ科草本にすむ。沖縄本島以西(南)に分布している種はイワサキクサゼミM.minutaで,体長12~17mmと小さく日本最小のセミである。体は黒色で光沢があり,翅は透明。チガヤ,ススキなどにすむが,現在ではサトウキビ畑に大発生し,主要害虫として扱われている。このセミの生活史はほぼ解明され,ススキで飼育すると卵から成虫まで3~4年,サトウキビだと1~3年で多くは2年で羽化する。サトウキビの葉上に止まって鳴き,産卵は葉の中脈に行う。卵は最初乳白色であるが,発生が進むにつれて橙色みを帯び,産卵後約40日で橙赤色の1齢幼虫が孵化(ふか)する。クサゼミM.hebesは台湾,中国から知られている。体は緑色で,台湾ではサトウキビの害虫に指定されている。同じ地域にすむルリクサゼミM.cyaneaは,草でなく高木に生息する。体全体が青藍色に輝き,前翅の基部が橙赤色をした美しいセミである。
執筆者:林 正美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報