クッタジュコフスキーの定理(読み)クッタジュコフスキーノテイリ(英語表記)Kutta-Joukowski's theorem

デジタル大辞泉 の解説

クッタジュコフスキー‐の‐ていり【クッタジュコフスキーの定理】

Kutta-Zhukovskij theorem》完全流体の一様な流れの中にある物体にはたらく揚力に関する定理。流れに対して垂直にはたらく揚力Lは、流体の密度ρ、一様な流体の速度U、物体周囲の循環Γとすると、L=ρUΓで表される。ドイツのM=W=クッタとロシアのN=ジュコフスキーが20世紀初頭にそれぞれ導出した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クッタ‐ジュコフスキーの定理
くったじゅこふすきーのていり
Kutta-Joukowski's theorem

粘性のない流体の一様な流れの中に、任意の断面形の柱状物体を流れに直角に置くとき、物体には流れに直角方向の力、すなわち揚力が働く。その大きさは、物体の軸方向の単位長さ当りL=ρであるという定理。ただし、ρは流体の密度、Uは一様流の速度、Γは物体の周りの循環である。

 この定理は、飛行機の翼の理論で基礎的な重要性をもっている。たとえば、一様な流れに対して翼を傾けておくと、翼を回るような流れが誘発される。その大きさを示す量が流体力学で循環とよばれるものである。翼の傾きを増すほど循環Γは大きくなる。またΓは流速Uに比例する。したがって、揚力は流体の密度に比例し、流速の2乗に比例し、かつ翼の傾きが大きいほど大きい。なお、円柱を回転させながら流れにさらすときにも、円柱の周りに循環ができるので、円柱には揚力が働く。この定理は、柱状物体を過ぎる二次元的な流れについて述べるものであるが、球のような三次元的な物体についても定性的に成り立つ。回転を与えた野球のボールがカーブする現象はこれによって説明される。

[今井 功]


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