日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケターレ」の意味・わかりやすい解説
ケターレ
けたーれ
Wolfgang Ketterle
(1957― )
ドイツの物理学者。ハイデルベルク生まれ。1976年にハイデルベルク大学に入学し、ミュンヘンの工科大学に移籍。その後はマックス・プランク研究所で研究を続ける。1986年にミュンヘン・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学とマックス・プランク研究所で博士号を取得。ハイデルベルク大学での研究生活を経て、1990年に渡米しマサチューセッツ工科大学(MIT)へ。このころ、ナトリウム原子を使って「ボース‐アインシュタイン凝縮」の状態をつくりだすことに成功した。その後MIT教授となる。
原子の集まりを絶対零度(-273.15℃)近い極低温まで冷やすと、それまではばらばらに動いていた原子が、まるでひとつの原子になったかのように、まとまって動く。このボース‐アインシュタイン凝縮の状態になった複数の原子集団の間で、その相互作用などを観察することにより、凝縮のメカニズムの解明にも貢献した。この業績により、これとは別にルビジウム原子を使ってボース‐アインシュタイン凝縮を実現したE・コーネル、C・ワイマンとともに、2001年のノーベル物理学賞を受賞した。
[馬場錬成]