アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市にある科学技術系の総合大学。私立。略称MIT。「科学の振興、開発、応用」を目的として、バージニア大学の地質学者ロジャーズWilliam Burton Rogers(1804―82)が理想的な工科大学の創設を試み、1861年にマサチューセッツ州から認可を受けたが、実際の開校は南北戦争のため1865年になった。創設当初から学生を積極的に実験に参加させる実用中心の技術教育を重視し、19世紀末には科学的教育・研究を取り入れた工科大学となった。その後、20世紀に入って多領域の学際的教育・研究を含む総合大学へ、さらには卓越した理工系大学院として世界の中心に位置する大学へと発展した。今日では、MITは理工系の知識だけでなく、人文・社会科学や芸術的教養をもつ、バランスのとれた科学技術指導者の育成を目ざす独自の教育体制をとっている。1980年代に入り、建築・都市計画学、工学、人文科学・社会科学、経営学、理学の各学部を擁し、それぞれの分野の学士、修士、博士の学位コースを設けている。ハーバード大学やボストン大学など近隣の諸大学と共同授業、単位互換、学生交換も行っており、カリフォルニア工科大学(CIT、Caltech(カルテック))などと並び、国際的に科学技術系大学のモデルとみなされている。また、財界、学術ほかの傑出したリーダー75人などからなる理事会は、「コーポレーション」The Corporationとよばれている。2003年現在、教員数974人、学生数1万0340人のうち学部課程学生が4112人。
[喜多村和之・杉谷祐美子]
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ボストン近郊所在の世界有数の工業大学。1861年,物理・地質学者ウィリアム・B. ロジャーズ(1804-82)の企画に基づき州から設立認許を受け,65年開学した。創立期の化学教授チャールズ・W.エリオットは69年にハーヴァードの学長に転出,以後何度もMITの併合を試みた。ランドグラント・カレッジでもあったMITは,当時全盛の博物学(動植物の分類学)に対抗して,物理・化学中心の動的な科学とその応用を体系的に教授し,アメリカ大陸での生産と交通の理知的な開発を企図した。時には職業訓練に傾斜したが,20世紀以降は膨大な寄付も受けて物理・化学の研究教育を再強化し,1934年,アメリカ大学協会の会員資格を得た。科学・工学の方面で世界的な成果をあげ,学生も両分野が大半を占めるが,しかし経済学や言語学でも世界をリードする。他大学に先駆けて講義資料を全世界に向け公開している。2015年の学士課程生4527人,大学院生6804人。
著者: 立川明
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アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジにある私立工科大学。〈科学の振興,開発,応用〉を目的として1861年に,公有地交付大学land-grant collegeの一つとして設置された。創設当初は機械,土木工学や建築,化学などの実用教育を重視したが,今日では人文・社会科学や芸術的教養とバランスのとれた科学技術分野の指導者の育成を目的とし,その教育方針と独自のカリキュラムは,世界の工科大学のモデルとなっている。通称MITとして,その研究と応用面の実績で世界的に著名である。学生数は約9700,教員約1900名(1996)。
執筆者:喜多村 和之
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