精選版 日本国語大辞典 「けち」の意味・読み・例文・類語
けち
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- ① ( 形動 ) 縁起が悪いこと。また、そのさま。不吉。不祥。または、不吉なことの前兆。
- ② ( 形動 ) 景気が悪いこと。また、そのさま。不景気。
- [初出の実例]「近年は浄るりでさへ何ぞといや金のない事。余りけちな此時節」(出典:浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)四)
- ③ ( 「吝嗇」とも書く )( 形動 ) 金銭や品物などを惜しがって出さないこと。みみっちいさま。また、その人。りんしょく。
- [初出の実例]「江戸じゃア、そんなけちな事は流行らねへのさ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二上)
- ④ ( 形動 ) 粗末なこと。貧弱なこと。また、そのさま。
- [初出の実例]「座敷の客も稀なりときくなれば、只、けちにのみ心をなぐさむなるべし」(出典:評判記・嶋原集(1655))
- ⑤ ( 形動 ) おろそかなこと。また、そのさま。粗略。
- [初出の実例]「天神の前にかこいをおびただしくはり、揚詰のやうに見ゆれど、太夫の評判なき事は、一世一代のけちで有まいか」(出典:咄本・軽口御前男(1703)一)
- ⑥ ( 形動 ) どうでもよいような小さいことにこだわること。料簡(りょうけん)が狭いこと。また、そのさま。
- [初出の実例]「これほどおめをくださるわたしに、なぜ心をおかれます。お身の大じになる事を申やうな、けちなやらうでもござりませぬ」(出典:洒落本・契情買虎之巻(1778)五)
- ⑦ ( 形動 ) 劣っていてつまらないこと。また、そのさま。
- [初出の実例]「けちな奴等だ、自分で自分のした事が云へない位なら、てんで仕ないがいい」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉四)
- ⑧ 悪評。難癖(なんくせ)。
- [ 2 ] 〘 接頭語 〙 語頭に付けていまいましい気持を表わす。「けちいまいましい」「けちぶとい」など。