改訂新版 世界大百科事典 「ゲティンソビエト」の意味・わかりやすい解説
ゲティン・ソビエト
Nghe-Tinh Soviet
1930年から31年にかけてベトナム中部のゲアン,ハティン両省に展開された農民運動。30年2月に創設されたばかりのベトナム共産党の指導下に,5月のメーデーに農民デモが組織された。以降仏印(フランス領インドシナ)当局との衝突を繰り返しながら,農民デモは武装化し始め,村役人や地方行政府を襲撃してその機能を麻痺させた。9月には多くの村々で,共産党支部と農会が中心となって行政執行委員会すなわち農村ソビエト政権が樹立されるに至った。運動の原因としては,(1)世界恐慌の影響,(2)地方的飢饉,(3)当時の共産党およびコミンテルンの過激な指導方針,が一般的に指摘されるが,(1)については,まだその影響が中部ベトナムには波及していなかったとする見解もある。運動は31年までには仏印当局による血の弾圧の前に終息した。当時の極左的指導方針に対する批判はあるものの,共産党の指導した最初の大規模な闘争として高く評価されている。
執筆者:白石 昌也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報