改訂新版 世界大百科事典 「ゲレルト」の意味・わかりやすい解説
ゲレルト
Christian Fürchtegott Gellert
生没年:1715-69
ドイツの小説家。ザクセン公国の牧師の子として生まれ,ライプチヒで神学を修めたのち,1745年から同大学で詩学,倫理学,修辞学を講じ,かたわら啓蒙的な創作に従事。病弱のため独身をとおしたが,あらゆる階層と交わり,感傷的ながら敬虔・温厚な人柄により時代の師表と仰がれた。18世紀ドイツでは聖書に次いでひろく読まれた《寓話と物語》2部(1746-48)のほかに《教訓詩と物語》(1754),《聖歌と頌歌》(1757)。戯曲《えせ信女》(1745),《宝くじ》(1746),《やさしい姉妹》(1747)によりフランスの〈まじめな喜劇〉をドイツに定着させ,写実的な〈市民劇〉の成立に貢献した。長編《スウェーデンのG伯爵夫人の生涯》2部(1747-48)はドイツ近代小説の端緒をなす。《書簡規範》(1751)が洗練されたドイツ語の普及に果たした役割も大きい。晩年の《倫理学講義》は死後出版(1770)され,ドイツ啓蒙思潮の実態を知る貴重な資料をなしている。
執筆者:南大路 振一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報