日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウモリダコ」の意味・わかりやすい解説
コウモリダコ
こうもりだこ / 蝙蝠蛸
vampire squid
[学] Vampyroteuthis infernalis
軟体動物門頭足綱のタコ。1種で1目、1科、1属を形成する。世界の温熱帯域の水深1000~4500メートルぐらいの深海中層にすむ。全長28.5センチメートル、外套(がいとう)長10センチメートル、頭幅8センチメートルぐらいに達する。体は寒天質様で柔らかく、全身真っ黒である。腕は8本あり、吸盤は1列に並んで22個ほどで、盤列の両側には触毛が並ぶ。また、第1腕と第2腕の間に腕より細い糸状触手がある。傘膜は広い。幼若期には外套膜の後端部に2対の肉質のひれがあるが、外套長3センチメートルぐらいになると1対だけになる。ひれの基部には発光器もある。コウモリダコ目は十腕形類(イカ類)とも八腕形類(タコ類)とも形態が異なる原始的な頭足類であり、現生では1種のみが含まれ、中生代ジュラ紀および白亜紀の化石種に似た種類がある。
[奥谷喬司]