外套膜(読み)がいとうまく(英語表記)mantle

翻訳|mantle

精選版 日本国語大辞典 「外套膜」の意味・読み・例文・類語

がいとう‐まく グヮイタウ‥【外套膜】

〘名〙 軟体動物外皮から形成され、体の全部または一部をおおう膜。イカ類では円錐形タコ類では袋状に発達し、貝類では、膜の縁の部分から石灰を分泌して殻をつくる。外套
※旅‐昭和一八年(1943)終刊号・貝から見た南方圏〈高槻俊一〉「大形(おほがた)シャコではその外套膜(グヮイタウマク)は広く貝殻の外にまで拡り」

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デジタル大辞泉 「外套膜」の意味・読み・例文・類語

がいとう‐まく〔グワイタウ‐〕【外×套膜】

軟体動物の体の表面を覆う膜。イカでは円錐状、タコでは袋状をし、貝類ではその表面や縁から石灰分を分泌して貝殻を作る。外套。

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改訂新版 世界大百科事典 「外套膜」の意味・わかりやすい解説

外套膜 (がいとうまく)
mantle

軟体動物の体表が膜状に薄くはり出し,主として内臓塊をおおうもの。二枚貝(斧足(ふそく)類)では左右2葉に分かれていて,腹縁は肥厚し貝殻を分泌する。巻貝腹足類)ではらせん状の螺管(らかん)の内壁を裏打ちする形になっている。頭足類では厚く袋状の筋肉からなり,中に内臓塊のみならず,貝殻(いわゆるイカの甲)をも包み込んでいる。貝殻をもつグループでは外套膜は薄い膜状であるが,頭足類や後鰓(こうさい)類のように外套膜が裸出しているものでは,表皮は丈夫で体を保護する。とくに頭足類では,外套膜表面をおおう皮層に分布する色素胞の作用により体色の変化を起こし,また筋肉の収縮などによって体表の凹凸も変えることができる。外套膜が形づくる空所は外套腔mantle cavityと呼ばれるが,外界と通じていて体腔ではない。外套腔には鰓(えら)があるほか,肛門や生殖物質の排出口もあり,呼吸水の吸入や不用物の排出などはいずれも外套膜の収縮弛緩あるいは繊毛流との組合せによって行われる。ほかに腕足類(触手動物)の背腹殻内にある筋肉膜,ホヤ類(原索動物)の厚く体表をおおう皮膜をも外套膜と呼ぶ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「外套膜」の意味・わかりやすい解説

外套膜
がいとうまく

軟体動物および腕足動物において、内臓嚢(のう)を覆うように広がった膜状の体表をいう。外套ともいい、これから貝殻が分泌される。外套膜の構造の違いにより、それぞれの種に特有の貝殻の形ができる。軟体動物のなかでも原始的な多板類(ヒザラガイ類)では、1枚の楕円(だえん)板状をなし、内臓嚢の背側にあって8枚の殻板を分泌する。二枚貝類(斧足(おのあし)類)では、左右2枚の外套膜が2枚の貝殻を分泌し体を包む。腹足類では内臓嚢の表面から足の背方に円筒状に広がり、内臓嚢のねじれに従って螺旋(らせん)状の貝殻をつくる。掘足(くっそく)類(ツノガイ類)では上端の開いた円錐(えんすい)形で、角笛状の貝殻ができる。頭足類の外套膜は1枚で、イカ類では円錐形、タコ類では嚢状をなし、表皮の陥入した嚢中に甲(ペンともいう)が分泌される。一方、シャミセンガイなど腕足動物では、背腹に1枚ずつの外套膜が伸び、貝殻を分泌するので、貝殻は背腹2枚となり、二枚貝類とは異なる。

[町田武生]

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百科事典マイペディア 「外套膜」の意味・わかりやすい解説

外套膜【がいとうまく】

外套とも。軟体動物の内臓を包む膜で,体表が薄く張り出したもの。斧足(ふそく)類では左右1枚ずつあり,それぞれ腹縁から殻を分泌。腹足類では円筒状で内臓のねじれに応じた殻を分泌する。頭足類では円錐形または嚢状の厚い肉質で表面には色素胞が発達していて,体色の変化を引き起こす。外套模が作りだす空所は外套腔と呼ばれ,ここにえらのほか,排出口などがある。
→関連項目軟体動物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「外套膜」の意味・わかりやすい解説

外套膜
がいとうまく
mantle

外套,マントルともいう。軟体動物において発達した特別な表皮。膜状に伸び出して体をくるみ,外套腔をつくる。外表面に石灰質の殻を分泌することが多いので,その位置,形状および数は,一般に殻と一致する。ただし,カセミミズ,ウミウシ,アメフラシ,ナメクジ,イカ,タコなど,殻を欠き,あるいは退化縮小している場合もある。陸産の軟体動物では,その一部分が変化して肺となる。

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栄養・生化学辞典 「外套膜」の解説

外套膜

 外套ともいう軟体類の内蔵を覆う筋肉質の膜.

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世界大百科事典(旧版)内の外套膜の言及

【マントル】より

…地球の主要部分で,体積の83%を占め,固体よりなる。ただし,ごく一部分は部分溶融状態にある。密度の高い,マフィックなケイ酸塩よりなり,層構造をもつ。これは深部ほど圧力が増大し,相転移が起こるためと考えられている。 地球は上部より,地殻,マントル,に分けられる。地殻とマントルとの境界面であるモホロビチッチ不連続面(略称モホ面)の深さは,大陸の地下で約35km,海洋下で約12km程度である。またマントルと核との境界面の深さは,およそ2900km(より正確には2880~2890km)である。…

※「外套膜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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