改訂新版 世界大百科事典 「コシャエ島」の意味・わかりやすい解説
コシャエ[島]
Kosrae Island
コスラエともクサイKusaieとも称する。西太平洋,カロリン諸島東端の火山島(東経163°06′,北緯5°19′)でミクロネシア連邦に属する。面積106.9km2。人口7700(2000)。熱帯雨林に覆われた山がちの孤島で,住民は海岸部のわずかの平地と,サンゴ礁の内海や近海とを生活圏としてきた。文化的・言語的に周囲のマーシャル,ポナペなどと類縁関係に立つ。19世紀までは,パン果,タロイモ,バナナ等の栽培と漁労による自給自足経済,トコシャと称する王を頂点とする首長制階層社会,発達した敬語と礼儀作法の体系等を特徴とする文化が栄えた。かつてのトコシャ王の居城レロは,現在でもコシャエの政治的文化的中心地であり,ポナペ島のナンマトル遺跡に似た城壁遺跡で知られている。16世紀に始まる西洋との接触以降は,他のカロリン諸島の島々と共に,スペイン,ドイツ,日本,アメリカの支配に服したが,文化的影響は軽微であった。伝統的文化を大きく変容させたのは,むしろ禁欲的なアメリカ系の組合教会派によるキリスト教の布教であった。1977年にアメリカの太平洋諸島国連信託統治領の行政区としてポナペ区より分立し,79年にはヤップ,トラック,ポナペと共にミクロネシア連邦を結成,86年にミクロネシア連邦は独立した。
執筆者:清水 昭俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報