改訂新版 世界大百科事典 「ゴトンロヨン」の意味・わかりやすい解説
ゴトン・ロヨン
Gotong-Royong
ジャワなどのインドネシアのムラ(自然村デサ)の慣習。通常は相互扶助と訳す。ジャワのムラ社会には,村寄合いの決めごとは全員で話しあい,全員の合意を打ちたてるという伝統があり,この合意に従って供養会を行い,共同奉仕をし,ムラの長老を首長に選出するという慣習法があった。この伝統的なムラの慣習法原理を静態的に見ると家族主義の原理となり,動態的にとらえると相互扶助(ゴトン・ロヨン)の原理となった。スカルノ大統領はインドネシア共和国の国家原理をパンチャ・シラと呼んだ。これはイスラム渡来以前から伝統的ムラ社会のなかにたたえられてきた価値である。家族主義あるいは相互扶助の,ムラの慣習法原理を基本としており,それにイスラム的な装いと西欧近代の原理を混交させたものであるともいわれる。この相互扶助の原理に従い,共産党員を本格的に入閣させたゴトン・ロヨン内閣が,1960年代のスカルノによって構想されたこともあった。
執筆者:増田 与
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報