改訂新版 世界大百科事典 「ゴニオラクス」の意味・わかりやすい解説
ゴニオラクス
Gonyaulax
渦鞭毛藻綱ペリジニウム科の1属で,体は単細胞で鎧板をもち,腹面から見るとき,横溝の左側が右側より低い位置にあるのが特徴である。巻くように横溝に沿う横鞭毛と縦溝から後方に伸びる縦鞭毛の計2本の鞭毛をもち,体を回転させながら泳ぎ,プランクトン生活をする。環境条件がよいときは,斜めに二分裂する無性生殖により増殖するが,条件が悪化すると海底に沈み,厚膜のシスト(囊子)を形成する。環境が好転すると,シストは発芽して鎧板のある泳ぐ細胞を放出する。世界各地の海域に生育するが,とくに日本の沿岸では内湾域に大発生して赤潮を起こし,しばしば養殖魚貝類に被害を与える。この属には毒素を含む種類があり,これを餌とする二枚貝の体内に毒素が蓄積し,貝を食べた人が中毒にかかって神経が麻痺し,死亡した記録がある。種類数が多く,全世界で約50種が知られ,そのほとんどすべては海産である。体長は30~80μmのものが多い。この属には,細胞の周囲の鎧板の形や並び方およびシストの形などが少し異なる種類があり,それらを分離独立させて,プロトゴニオラクス属Protogonyaulaxを創設する学者もいる。
執筆者:千原 光雄 なお,ゴニオラクスは鞭毛で運動するところから,動物学では原生動物門有色鞭毛虫綱に分類されている。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報