精選版 日本国語大辞典 「赤潮」の意味・読み・例文・類語
あか‐しお ‥しほ【赤潮】
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海水中で浮遊生活している生物(プランクトン)の大量繁殖や集積によって、海水の色が平常時と異なって着色する現象。湖沼に生じる同様の現象は淡水赤潮とよばれる。呈色状態は、生物の種、活性、密度によって多様であり、色合いの違いから、白潮(しろしお)、青潮(あおしお)、緑潮(みどりしお)とよばれることもある。また、赤潮が水産業に大きな被害を与えるところから、厄水(やくみず)、薬水(やくみず)、くされ潮、苦潮(にがしお)などともいわれ、地方固有の呼び方も多い。ただし、苦潮などは生物そのものによって生じたというよりも、海底近くにあった貧酸素水塊が海面近くに湧出(ゆうしゅつ)したものである。外国でも同じ意味の名称がつけられている。赤潮は昔からおきており、その現象は人々に強い印象を与えたと考えられ、「海が血に染まった」といった類の伝説はこれをさしていることが多い。
[佐野 昭・高橋正征]
赤潮の原因となる生物は以下のように三つに大別できる。
(1)珪藻(けいそう)・藍藻(らんそう) これらは葉緑素をもち光合成によって無機物を有機物化する純粋の光合成独立栄養生物で、これらによる被害は少ない。しかし、羽状珪藻や藍藻のなかに毒物を含むものが知られるようになり、人間、家畜、魚貝類に被害が出ている。
(2)鞭毛藻(べんもうそう)・鞭毛虫類 鞭毛藻は光合成を行うが、溶存有機物を必要としたり、鞭毛を用いて運動し、動物的な生態をあわせもつ光合成生物である。鞭毛虫類は分類学上は鞭毛藻に含まれるものが多いがクロロフィルをもたず光合成は行わない。毒性をもっていたり、魚のえらをふさいだりして、魚貝類に直接被害を与える赤潮の原因となることが多い。
(3)原生動物・甲殻類など これらによる赤潮は被害をおこすことはほとんどなく、むしろ食物連鎖の過程で有用な位置を占めている。
赤潮の原因となる生物、とくに光合成を行う種が大増殖するには、水塊が成層していて上下の対流が少なく、真光層に栄養塩類が豊富で、光の強さと波長、水温、塩分がその種にとって適度であることが必要である。温帯地方では春から初夏にかけての海がこれに該当する。とくに梅雨後に晴天が続くと赤潮が発生しやすい。これは、陸地から栄養塩類が補給されるとともに、増殖条件が強化されるためである。増殖した生物が海流、潮汐(ちょうせき)流や風の影響で集積したり、走光性など生物自体の運動で集合すると赤潮現象は顕著になる。
赤潮は条件が整えば自然に発生するが、近年では内湾や沿岸で多発している。その背景にはその海域の富栄養化がある。常時栄養塩類が補給されるため植物プランクトンが継続して増殖し、ある種の金属類や有機物の補給は鞭毛藻や鞭毛虫類の増殖を促す。また富栄養化という環境変化に伴って生物相が変わり、従来は認められなかった生物が赤潮化して猛威を振るうこともある。1972年(昭和47)、1977年、1978年に瀬戸内海播磨灘(はりまなだ)で養殖ハマチに大被害を与えたシャトネラ(通称ホルネリア)赤潮はその例である。1980年代ごろから国内外で発生する赤潮には、オイルタンカーのバラスト水などとともに海外から持ち込まれて起こる外来性赤潮の可能性が指摘されている。
[佐野 昭・高橋正征]
赤潮の発生はさまざまな被害をもたらす。鞭毛藻には有毒種が多く、魚類を斃死(へいし)させ、また有毒化した魚貝類を食べた人間が中毒したりする。人間の粘膜を刺激するガスを発生し、熱病の原因となる種もある。無害種でも魚貝類のえらに付着して窒息死させることがある。赤潮生物が急激に大量死すると、有毒細菌が繁殖したり、酸化分解のために水中の酸素が欠乏して魚貝類を斃死または逃避させる。
播磨灘のシャトネラ赤潮による被害額は1972年が70億円以上、1977年、1978年がともに20億円以上に上った。1984年には熊野灘にギムノジニウムによる赤潮が発生し46億円相当の被害を与えた。1988年以降はシャトネラ赤潮は減少し、ギムノジニウム赤潮の発生が目だっているが、赤潮全般の被害は減少の傾向にある。
赤潮対策として、薬品散布による死滅、粘土を用いる強制沈殿、ポンプによる回収などの方法がある。発生の予測や監視によって養殖魚を退避させることもある。しかし、抜本的には、過剰な栄養塩類、有機物、金属などの補給を防ぐことが必要であり、現在では、法律とそれに基づく自治体の条例によって規制され、廃水処理の技術も向上しつつある。また、交易の活発化に伴い、生物の伝播(でんぱ)も活発化して、赤潮の広域拡大が問題となっている。とくに、有毒物質を含む赤潮では問題が深刻である。
[佐野 昭・高橋正征]
『岡市友利編『赤潮の科学(第2版)』(1997・恒星社厚生閣)』▽『日本水産学会編『赤潮――発生機構と対策』(2007・恒星社厚生閣)』▽『今井一郎著『シャットネラ赤潮の生物学』(2012・生物研究社)』
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出典 (株)デジサーフ、(株)セキノレーシングスポーツサーフィン用語集について 情報
…プランクトン性の藻類や定着性の微細な藻類は稚魚貝や動物プランクトンなどの餌料として食物連鎖のうえで重要な位置を占める。ところで,ラン藻,ケイ藻,渦鞭毛藻などのプランクトン性藻類は環境が変化すると突然異常に大発生して,海では赤潮を,湖や池では水の華と呼ぶ現象を起こすことがある。赤潮や水の華は,水界の物理化学的性質をさらに急変させ,魚貝類を死滅させるなど,しばしば大きな被害をもたらす。…
… 魚の大発生は豊漁と呼ばれることもあり,その結果,時には大量死亡も起こりうる。赤潮は,海や湖,沼や池などの水域に植物または動物プランクトンが大発生した場合の総称で,水の華とか,色によっては青潮またはアオコとも呼ばれる。この現象は,その水域の富栄養化によって起こり,ひどい場合には魚や貝の大量死亡をまねくこともある。…
…鉛直移動の結果として,表層で生産された有機物が短時日のうちに深層に輸送されることになり,海洋の物質循環に大きな役割を果たしている。
[赤潮]
沿岸域の富栄養化した海域では,しばしばプランクトンが大増殖し,そのために海水が着色することがある。これを赤潮と呼ぶ。…
…また季節的にも夏から秋にかけてみられることが多い。植物プランクトンが異常発生すると,水面近くは溶存酸素が過飽和となり,深いところでは酸素が欠乏してくるので,生息している魚類などに影響を起こし,この点では海に赤潮が発生するのとよく似ている。局地的に発生することが多く,大きな川のよどみになったところや小さな湖水や池などによく見られ,日本では平地の淡水に見られるのが普通である。…
※「赤潮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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