改訂新版 世界大百科事典 「ササウオタマバエ」の意味・わかりやすい解説
ササウオタマバエ (笹魚玉蠅)
Hasegawaia sasacola
双翅目タマバエ科の昆虫。幼虫はササの側芽に長さ4~40cmのタケノコに似た虫えいをつくる。この虫えいは江戸時代から笹魚として知られている。笹魚には,ひとりでに谷川に落ちてイワナになるという伝説があり,橘南谿の《東遊記》や木村蒹葭堂の《蒹葭堂雑録》(1856)などにその記述が見られる。また長谷川忠崇はこの伝説に疑問をもち,その構造を調べ,骨も肉もなく焼いても魚の臭気のないことを確かめて〈是れ竹の病ならん〉と《飛州志》(1745ころ)の中に記している。本種の属名Hasegawaiaは彼を記念したものである。成虫はカに似ており,体長5mm,春に虫えいから直接羽化する。幼虫には長期休眠性があり,産卵された翌年羽化するものから,4年間休眠し足かけ6年目に羽化するものまでが通常混在する。一つの虫えいに10~50匹の幼虫がそれぞれの幼虫室に入っている。おもに北日本の日本海側に分布する。
執筆者:巣瀬 司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報