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江戸中期の博物学者、文人。元文(げんぶん)元年11月28日大坂・北堀江に生まれる。名は孔恭(こうきょう)、字(あざな)は世粛(せいしゅく)、巽斎(そんさい)と号した。通称坪井屋吉右衛門(きちえもん)(多吉郎)。代々酒造業を営み、庭の井戸から出た古芦(あし)の根にちなんで、書斎を蒹葭堂と名づけた。幼時より植物に親しみ、本草学者小野蘭山(らんざん)に入門、生涯考索に努めた。多趣味で絵画は花鳥のほか山水を池大雅(いけのたいが)に学び、篆刻(てんこく)は高芙蓉(こうふよう)に就き、温雅な作を残した。また煎茶(せんちゃ)にも通じ売茶翁(ばいさおう)の遺品を伝えた。詩文は片山北海(ほっかい)に師事し、1758年(宝暦8)ごろより月例詩文会を催して混沌(こんとん)詩社の基礎をつくった。和漢の瀟洒(しょうしゃ)な書籍を自費出版したが、書画典籍や地図標本類の膨大な収集は内外に知られ、遠近よりの来訪者名簿『蒹葭堂日記』は当時の文運をうかがう好資料である。享和(きょうわ)2年1月25日没。小橋(おばせ)(天王寺区餌差町)大応寺に葬られた。
[水田紀久]
『野間光辰監、水田紀久編『蒹葭堂日記』(1972・中尾松泉堂書店)』
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… 日本産はこの種のほか5種あり,ベニオキナエビスガイM.hiraseiはこの種に似て紅色でやや低い円錐形で,銚子沖から沖縄,フィリピンに分布する。木村蒹葭堂(けんかどう)が1775年(安永4)に《奇貝図譜》を著して,これに図説している。これは世界でこの類の発見の最初の記録である。…
…深根輔仁の《本草和名》(918ころ)に始まり,江戸時代に入って多くなった。大江流芳の《貝尽(かいつくし)浦の錦》(1749)や松岡玄達の《怡顔斉介品(いがんさいかいひん)》(1758)などが出,また木村蒹葭堂(けんかどう)の《奇貝図譜》(1775)はベニオキナエビスガイはじめ多くの深海産の貝を図説したものである。〈生きている化石〉オキナエビスガイが西インド諸島で発見されて学会を驚かせたのが1855年であるから,それより80年も前のことである。…
…江戸末期の随筆。木村蒹葭堂著。1859年(安政6)刊。…
…内題には《山海名産図会》とのみあるが,目録題は《日本山海名産図会》とされている。本文は木村蒹葭堂(けんかどう)の著とされ,画は蔀関月(しとみかんげつ)の筆。編著者蒹葭堂は大坂の人。…
※「木村蒹葭堂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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