さながら

精選版 日本国語大辞典 「さながら」の意味・読み・例文・類語

さ‐ながら

(副詞「さ」に助詞「ながら」が付いてできたもの)
[1] 〘副〙
① すでに存する事物、事態が不変の姿であるさまを表わす。そのまま。もとの通り。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「山さかさまに崩る。〈略〉多くの人、死ぬれば、山さながら静まりぬ」
今昔(1120頃か)二四「女の童も不見。衣共着重たりしも、袴も然乍(さなが)ら有り」
② すでに存する事物、事態が量的に不変であるさまを表わす。そのまま全部。全部そっくり。
蜻蛉(974頃)中「後の方人、さながら集りて舞はすべし」
方丈記(1212)「七珍万宝さながら灰燼となりにき」
③ (宛) 文脈上または心理的に問題になっている事物、事態を、既知の事物、事態になぞらえるときの、同一感を表わす。まるで。あたかも。
※新後撰(1303)春下・七一「山桜さける咲かざるおしなべてさなから花とみゆる白雲〈藤原為氏〉」
[2] 〘接続〙 先行する事実を肯定しながら、それと両立しにくい一方の事実を述べるのに用いる。そうは言うものの。そうだと言っても。かと言ってやはり。
※浮世草子・世間胸算用(1692)二「喰にげ大じんにあふ事多し。さながらそれとて乞がたく、其客死分にしてさらりと帳を消し置て」

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