日本大百科全書(ニッポニカ) 「サロン写真」の意味・わかりやすい解説
サロン写真
さろんしゃしん
日本では絵画的、芸術的傾向のアマチュア写真についての総称となっている。歴史的には1893年、芸術写真家の主流であったロンドン写真協会に対抗して、ジョージ・デビソンらが結成した「つながった輪の仲間たち」The Linked Ring Brotherhoodの写真展を「サロン」と名づけたときに始まる。軟焦点(ソフト・フォーカス)レンズや粗粒子面印画紙を使ってぼかした調子の効果をねらい、当時新興の印象派絵画に表面上接近した表現となったものの、造形理念的な共通性はない。しかしサロン派は新しい絵画的写真の主流となり、世界各国から「サロン」展に作品が集まり、また各国でその傾向を追う分派も現れた。
日本のアマチュアの活動は明治20年代に始まり、とくに1901年(明治34)に結成された東洋写真会は写真画と自らよぶ芸術写真の創造を目ざした。その後、26年(大正15)に結成された全日本写真連盟が第1回全日本写真サロン展を開き、翌年には国際写真サロンも開催されて現在に至っている。これは朝日新聞社系であるが、毎日新聞社も全日本写真サロン展と歩調をあわせ、まず1925年に全関西写真連盟を、翌年には全関東写真連盟を結成。この年両者を統合した日本写真連盟ができ、第1回日本写真美術展を主催した。これは64年(昭和39)に現在の毎日写真コンテストに引き継がれている。
[重森弘淹]