改訂新版 世界大百科事典 「シタナガオオコウモリ」の意味・わかりやすい解説
シタナガオオコウモリ (舌長大蝙蝠)
long-tongued fruit bat
翼手目オオコウモリ科シタナガオオコウモリ亜科Macroglossinaeに属する哺乳類の総称。花みつ・花粉食の小型のオオコウモリで舌が長いのでこの名がある。7属15種からなり,アフリカ,フィリピン,インドシナ,インド,スンダ列島,オーストラリアに分布し,マングローブ林や熱帯雨林,または洞窟に生息する。頭胴長5~13cm,前腕長4~7cm,軟らかい果肉も食べるが,開いた花のみつや花粉が主食で,それをなめるのに適応している。すなわち,舌は頭胴長の1/3ほどもあり,口の外に長く突き出すことができる。その舌の先端には毛状の乳頭がある。顔は細長く,食物をそしゃくする必要がないため臼歯(きゆうし)はきわめて小さい。夜行性で,飼育下での観察によると,日没と同時に活動を開始し,はちみつを水で薄めた液を好む。アフリカ西部でアフリカシタナガオオコウモリ(アフリカシタナガフルーツコウモリ)Megaloglossus woermanniがノウゼンカズラ科のソーセージノキの花にとまっていたことが観察されている。新世界に生息するヘラコウモリ科のシタナガコウモリ亜科のものの生態も本種に類似するが,鼻葉(びよう)がある点で区別できる。
執筆者:吉行 瑞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報