日本大百科全書(ニッポニカ) 「シミアン」の意味・わかりやすい解説
シミアン
しみあん
François Joseph Charles Simiand
(1873―1935)
フランスの社会学者、経済学者。デュルケーム学派の経済社会学の代表的存在として活躍した。エコール・ノルマル・シュペリュール(高等師範学校)に入り、晩年コレージュ・ド・フランスの教授となった。社会学主義の立場にたち、経済現象を個人心理的事実から説明する方法を否定し、社会現象としてとらえ、集合表象として実証的に追究することを主張した。そして、貨幣の社会的起源の探究を通じて、貨幣が、社会全体の判断に基づいて価値を与えられた一つの社会的実在として、原始社会における宗教的・呪術(じゅじゅつ)的特性をもつ事実から発生したことを指摘し、この貨幣的事実がまさしく集合表象である、と論じている。彼の生涯にわたる研究は、このような立場から、賃金や貨幣などの経済現象だけでなく、宗教現象、法制現象、道徳現象などに及んでいる。主著として『賃金・社会進化・貨幣』全3巻(1932)がある。
[本間康平]