フランスの社会学者デュルケームによって用いられた概念。集団生活を基体として成立する一種独特の表象で、個々人の意識の作用に還元しえないものをいう。集合意識とほとんど同義に使われることが多いが、その表象としての機能面をさしているといえよう。デュルケームによれば、個人の意識において形成される表象、個人表象は、集団を基体として成立する集合表象とは区別される。後者は一種独特の総合の所産であり、集団が自らや自らにかかわりをもつ諸対象についてつくりあげる表象である。たとえば、社会がある守護動物をその祖先と考えていたり、またある神を想像し、その守護を受けていると信じているとき、これらは個々人の意識に還元できない独自の集合表象をなしている。このように個人のそれとは異なる独自の構成をもった意識現象を想定することは、心理学的ないし個人主義的アプローチとは異なる社会学的アプローチを要請することになる。デュルケームは、宗教、道徳、その他広く社会的な行為様式や思惟(しい)様式をこのようなものとしてとらえ、社会学的に考察し、成果をあげた。
[宮島 喬]
『E・デュルケーム著、山田吉彦訳『社会学と哲学』(1952・創元社)』
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