日本大百科全書(ニッポニカ) 「ショルレンマー」の意味・わかりやすい解説
ショルレンマー
しょるれんまー
Carl Schorlemmer
(1834―1892)
ドイツの有機化学者。ダルムシュタットの生まれ。薬剤師の資格を得てハイデルベルクの薬局に勤めたが、ブンゼンの講義を聴いて化学を志し、1学期間ギーセン大学でウィルHeinrich Will(1812―1890)とコップに学んだ。1859年イギリスに渡り、マンチェスターのオーエンズ・カレッジのロスコーの助手となり、1874年、この大学に創設されたイギリス最初の有機化学講座の教授となった。1864年、メチルCH3-CH3と水素化エチルC2H5-Hとが異性体ではなく、同一の化合物のエタンであることを示すことにより、炭素の4個の原子価が等価であることを証明した。この業績はケクレの化学構造理論を補強するものであった。引き続いて彼はパラフィン族炭化水素の系列を明らかにし、またさらに、これらの化合物の構造と沸点との規則的な関係をみいだした。『有機化学教科書』(1871)やロスコーとの共著『化学教科書』9巻(1877~1901)を著したほか、大著『化学史』4巻(1843~1847)の著者でもあるコップの影響を受けて、『有機化学の起源と発展』(1879)を著した。1860年代なかば以来エンゲルスとマルクスの親友となり、ドイツ社会民主労働党員となった。1879年イギリスに帰化した。
[内田正夫]