日本大百科全書(ニッポニカ) 「シリヤケイカ」の意味・わかりやすい解説
シリヤケイカ
しりやけいか / 尻焼烏賊
spotted cuttlefish
[学] Sepiella japonica
軟体動物門頭足綱コウイカ科のイカ。太平洋岸では房総半島、日本海では富山湾以南に分布するほか、韓国、中国沿岸にもすむ。外套(がいとう)長18センチメートル、幅9センチメートルぐらいに達する。外套膜はドーム形、ひれはその全側縁にわたる。腕長はほぼ等しく外套長の半分ほどである。触腕の吸盤掌部には10列の微小な吸盤がある。貝殻(甲)は長卵形で石灰質であるが、コウイカ属にみられるような棘(とげ)はない。外套膜後端に尾腺(びせん)開口があり、そこから分泌される赤褐色の液のため外套膜面後半が染まる。これが名の由来で、ほかにシリクサリ(尻腐り)の名もある。地方によってはマイカともよばれ、また、墨汁嚢(のう)から出す墨汁が多いので、コウイカとともにスミイカと混称される。4~5月ごろ内湾に来遊し、黒い膜で覆われた直径1センチメートルぐらいの卵を海藻などに産み付ける。このイカの肉は厚くて柔らかく、刺身などにされる。多産する地方では甲のついたまま乾製品とし、甲付きするめをつくる。
[奥谷喬司]