シンサンカクガイ (新三角貝)
ネオトリゴニアともいう。サンカクガイ科の二枚貝。古生代デボン紀から中生代白亜紀に栄えたトリゴニアTrigonia(サンカクガイ)類の生残りで,〈生きている化石〉である。オーストラリアおよびタスマニア島の周縁海域に分布し,7種に分類されるが互いによく似ている。1801年にタスマニア島の海岸で死殻が発見され,現生していることがわかった。殻は丸みのある四角形で多少膨らみ,表面は黒褐色の皮をかむる。節のある放射肋が約20本あり,内面は銀白色または紫色で強い真珠光沢がある。かみ合せの歯は大きく強く細かく刻まれている。軟体は白く,前後閉殻筋がある。出・入水管はなく,足は長い斧形であるが先端は狭く平らで,足糸がある。潮間帯から水深100mの砂泥底にすむ。ウチムラサキシンサンカクガイNeotrigonia margaritaceaはもっとも普通種で,殻の長さ3.3cm,高さ3.1cmで,オーストラリア南部,タスマニア島に分布する。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
シンサンカクガイ
しんさんかくがい / 新三角貝
brooch shell
[学] Neotrigonia margaritacea
軟体動物門二枚貝綱サンカクガイ科の二枚貝。オーストラリア南東岸およびタスマニア島近海に分布し、内湾の砂泥底にすむ。殻長33ミリメートル、殻高31ミリメートルに達し、殻は丸みのある四辺形状で、前縁は丸く、後縁はまっすぐ切断したようになっている。殻表は暗褐色で、顆粒(かりゅう)のある約20条の放射肋(ろく)をもつ。かみ合せには、前後に分かれた逆V字形の大きい歯があり、その上は細かく刻まれている。内面は紫色がかった強い真珠光沢がある。この類(シンサンカクガイ属)は古生代デボン紀に出現し、中生代のジュラ紀から白亜紀に栄えたサンカクガイ類Trigoniaの生き残りで「生きている化石」として知られ、オーストラリア近海にのみ7種が現存しているにすぎない。
[奥谷喬司]
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シンサンカクガイ
Neotrigonia margaritacea; brooch shell
軟体動物門二枚貝綱サンカクガイ科。殻長 3.3cm,殻高 3.1cm,殻幅 1.8cm。殻は丸みのある四角形で,前縁は丸く,後縁はややまっすぐである。殻表は黒褐色の殻皮をかぶり,約 20本の放射肋が走るが,肋上にはいぼがある。内面は強い真珠光沢があり,鉸歯は強く,大きい。オーストラリアの東南岸およびタスマニア島に分布し,内湾の浅海の砂礫底にすむ。この類は,約4億年前の古生代に出現し,中生代ジュラ紀から白亜紀に栄えたサンカクガイの生残りで「生きている化石」といわれ,オーストラリア周辺に7種が分布している。
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世界大百科事典(旧版)内のシンサンカクガイの言及
【トリゴニア】より
…種の生存期間はやや長いものが多いが,形態が派手で変化に富むため,地域内での対比や中生代の生物地理区・古環境の推定,表面彫刻の機能的意味を考察するうえに有効な分類群である。新生代に入ると急速に衰退して,わずかにオーストラリアに第三紀のエオトリゴニアEotrigonia,現生の[シンサンカクガイ](ネオトリゴニアNeotrigonia)数種のみが知られ,“[生きている化石]”の一例とされている。【速水 格】。…
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