地質時代区分で、現在から数えて3番目の代。先カンブリア時代と中生代の間の約5億4100万年前から約2億5217万年前までの約2億8883万年間に相当する。古生代に形成された地層を古生界という。古生代は古い順に、カンブリア紀、オルドビス紀、シルル紀(ゴトランド紀)、デボン紀、石炭紀、ペルム紀(二畳紀)の六つの紀に区分されている。前の3紀を旧古生代、後の3紀を新古生代という。無脊椎(せきつい)動物は古生代に入ると著しく分化、発展を遂げ、古生代の初めには大部分の門が出そろう。旧古生代では三葉虫類、オウムガイ類、筆石(ふでいし)類、床板サンゴ類、腕足類が、また、新古生代では四放サンゴ類、原生動物の紡錘虫類(フズリナ)が繁栄する。脊椎動物では、カンブリア紀にコノドント類やナメクジウオの仲間の原始的魚類が、オルドビス紀に魚類が出現し、デボン紀には両生類が、また石炭紀には爬虫(はちゅう)類も出現する。植物では、シルル紀末に出現した無種子の維管束植物が発展を遂げ、石炭紀には種子シダ類などとともに大森林を形成する。石炭紀末には南半球にあったゴンドワナ大陸がプレート運動で北上し、北半球にあったローレンシア大陸(ローレンシア台地)に衝突し、超大陸パンゲアが形成された。ペルム紀後半には、大規模な極域での大陸氷河の発達による大海退に伴う大陸棚浅海部の消失、海水温の低下や、ペルム紀末の火山活動による急激な気候温暖化がもたらした海洋循環の停滞によって深海底での貧酸素環境が出現するなど海洋環境の激変があり、三葉虫類、四放サンゴ類、紡錘虫類など、古生代を特徴づける海生種の95%が絶滅するという地球史上最大の大量絶滅事件が起こった。古生代には、シルル紀からデボン紀に変動の極を有するカレドニア造山運動と、石炭紀からペルム紀に極を有するヘルシニア造山運動(バリスカン造山運動)が知られている。日本の古生界には、オルドビス紀以降の地層として飛騨外縁帯、黒瀬川帯、南部北上帯が知られている。石炭・ペルム両紀の石灰岩やチャートは古生代末期、中生代中期のプレート付加体の地層中の異地性岩体として日本各地に広く分布している。
[小澤智生 2015年8月19日]
『リチャード・T・J・ムーディ、アンドレイ・ユウ・ジュラヴリョフ著、小畠郁生監訳『生命と地球の進化アトラスⅠ 地球の起源からシルル紀』(2003・朝倉書店)』▽『ドゥーガル・ディクソン著、小畠郁生監訳『生命と地球の進化アトラスⅡ デボン紀から白亜紀』(2003・朝倉書店)』
地質時代の一区分で,顕生累代Phanerozoic eons最初の代。年代でいうと,今から約5億9000万年前から約2億4800万年前までの,およそ3億4200万年間に相当する。表のように六つの紀periodに区分されている。なお,石炭紀の場合,アメリカではこれを二分し,下位のミシシッピ紀Mississippianと上位のペンシルベニア紀Pennsylvanianとすることが多い。
古生代の特色は,地質時代において最初に硬組織hard tissue,すなわちキチン質や石灰質の骨格構造(主として殻)をもつ顕微鏡サイズより大型の生物が出現したことである。それ以前の先カンブリア時代のうち生命が発現してからの約30億年間は,微細な無殻の原始生物ばかりであったため隠生累代と呼ばれる。ただし,その最後の1億年くらいの間には無殻ではあるが,大型の無脊椎動物が急激に発達するので(オーストラリアのエディアカラ動物群,アフリカのナマ動物群が代表的),これを始カンブリア紀Eocambrian periodとして独立させ顕生累代の最初の紀,つまり古生代の第1の紀にしようという意見もある。
古生代における出来事としては,生物の著しい発展を第一にあげなければならない。カンブリア紀には,下に示すように,すでに無脊椎動物のほぼすべての門phylumの代表が出現しているし,疑わしいものではあるが,脊椎動物である魚類も報告されている。かっこ内は例で,*印は古生代のみに栄えた絶滅動物を示す。
原生動物(有孔虫類,放散虫類),古杯動物(*アルカエオキアツス類),海綿動物(ケイ質海綿類),腔腸動物(ハチクラゲ類,ヒドロ虫類),環形動物(ワムシ類),苔虫動物(コケムシ類),腕足動物(無関節類),軟体動物(腹足類,オウムガイ類),節足動物(*三葉虫類,カイエビ類),棘皮動物(ウミユリ類,*ウミリンゴ類,*ウミツボミ類),錐歯動物(コノドント類),半索動物(*筆石類),脊椎動物(魚類?)。
古生代の間に,生物進化のうえで著しい生態的変化が起こっている。それは,動植物ともに,それまでの長い水中生活から陸上生活へと生態圏を拡大したことである。シルル紀最後期からデボン紀初期にかけて,古生マツバラン類をはじめとするシダ植物が水辺に繁茂し,デボン紀中期にはほぼ完全な陸上型のシダ類が栄え,後期には鱗木の祖先型である木生シダの仲間さえ出現している。
このような植物の上陸にすぐ続いて,昆虫類やクモ類が陸上生活を始めている。魚類はシルル紀後期に甲冑魚をはじめとする多くの種属が出て,デボン紀には魚類時代と呼ばれるほどの繁栄をとげるが,デボン紀後期に,魚型を保った最初の両生類イクチオステガが出現した。
石炭紀には,大規模な石炭層が形成されるほどに陸上植物が繁茂し,シダ類には木生で樹高数十mに達するものも出た。昆虫類が著しく栄え,トンボの仲間のメガネウラは翅をひろげると65cm以上にもなった。
石炭紀から二畳紀にかけて,南半球側にゴンドワナGondwana,北半球側にユーラメリアEurameria(ローラシアともいう)と呼ばれる超大陸があり,それらが西端で合体し,全体がパンゲアPangaeaと称する巨大な超大陸をなしていたと考えられている。このころ地球上の他の部分には大陸はなく,この超大陸のみの単調な海陸分布となっていた。両大陸の間には赤道沿いにテチスTethys海が湾状に広がり,三葉虫,フズリナ(紡錘虫)をはじめとする海生生物が繁栄し,日本列島のもとになる堆積域もこの範囲に含まれていたと考えられる。
シルル紀後期~デボン紀初期,石炭紀~二畳紀にそれぞれ大きな地殻変動が世界各地で起こり,代表的な地域の名をとって,それぞれカレドニア,バリスカン(ヘルシニアン)造山運動と呼んでいる。
→地質時代
執筆者:浜田 隆士
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…地質時代,歴史時代,観測時代を通じて,これまで明らかになっている気候変化の事実を要約すると次の通りである。(1)古生代,中生代 古生代より前,すなわち先カンブリア時代(約38億~5.9億年前)における気候はほとんどわかっていない。古生代の大半の期間は両極地方には氷がなく,今日より温暖であった。…
※「古生代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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