ジベンゾアントラセン

化学辞典 第2版 「ジベンゾアントラセン」の解説

ジベンゾアントラセン
ジベンゾアントラセン
dibenzoanthracene

C32H14(278.35).次に示す種々の異性体がある.

(1)ジベンゾ[a,c]アントラセンo-トルオイルフェナントレンを加熱閉環させると得られる.淡黄色の結晶.融点200~202 ℃.濃硫酸呈色は赤紫を呈する.マウスの皮膚に弱い発がん性を示す.
(2)ジベンゾ[a,h]アントラセン:2-メチル-1-α-ナフトイルナフタレンの加熱閉環によって得られる.結晶.融点262 ℃.ジベンゾアントラセンのなかでこの化合物のみが強い発がん性をもち,とくに皮膚がんを起こす作用がある.
(3)ベンゾ[a]ナフタセン石炭タールに少量含まれ,ピレンピセンとともに混在する.黄金色の結晶.融点263~264 ℃.
(4)ジベンゾ[a,j]アントラセン:融点196 ℃ の結晶.
(5)ジベンゾ[b,j]アントラセン:[別用語参照]ペンタセン

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ジベンゾアントラセン」の意味・わかりやすい解説

ジベンゾアントラセン
dibenzanthracene

ジベンズアントラセンともいう。アントラセンにベンゼン環が2個縮合した形の5環式芳香族炭化水素の総称。縮合の位置の違いによる多くの異性体がある。各異性体の名称は,母核であるアントラセンのどの炭素にベンゼン環が縮合しているかの番号を付して表す。例えば,1,2,5,6-ジベンゾアントラセン(無色の結晶,融点266℃,沸点524℃),1,2,3,4-ジベンゾアントラセン(無色の結晶,融点207℃,沸点518℃)など。



 このうち,1,2,5,6-ジベンゾアントラセンは強い発癌性があるとされている。近年コールタール成分の中に発癌性を有する物質の含まれることがわかり,いずれも多環式芳香族化合物であるとされている。
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