日本大百科全書(ニッポニカ) 「スケルガード岩体」の意味・わかりやすい解説
スケルガード岩体
すけるがーどがんたい
skaergaard intrusive body
東グリーンランド南部でみられる長径8キロメートル余りの第三紀斑糲(はんれい)岩質結晶分化岩体。周辺部は主として先カンブリア時代の変成岩類で、岩体の形状はロート状と推定されている。貫入した高アルミナ玄武岩質マグマは、冷却の過程で対流を繰り返しながら晶出した有色鉱物、無色鉱物を規則的に分離し、これをあたかも地層のように堆積(たいせき)させた。こうして岩体の下部より上部にかけておおよそ3キロメートルにわたって造岩鉱物の化学成分は系統的に変化し、斜長石ではカルシウムに富むものからナトリウムに富むものに、単斜輝石、橄欖(かんらん)石ではマグネシウムに富むものから鉄分に富むものに変化している。地球上でもっとも鉄分に富む鉄質斑糲岩を産すること、元素の濃集過程がもっとも詳細に研究された岩体として著名であり、地球科学の各分野に重要な影響を与えた。この鉄分に富む分化経路は低水蒸気圧、低酸素圧下でのマグマの結晶作用による。
[矢島敏彦]