砕屑(さいせつ)粒子などが堆積物となり、固化して堆積岩となるまでのすべての過程をいう。つまり、風化による砕屑粒子の形成から始まり、それが風や水流などによって運搬され、最終的に水底などの地表のある地点で静止し、地層が形成され、それが続成作用で固化するまでのすべての過程の総称である。砕屑粒子からなる堆積岩だけでなく、生物遺骸(いがい)が集積したり、水中に溶け込んでいた物質が化学的に沈殿する過程も堆積に含まれる。
堆積ということばをより狭義に用いるときは、水中や空中に浮いている砕屑粒子などが、水底や地表面に降下して静止する過程だけをさす。
[村田明広]
堆積作用は、堆積物がたまる場の物理的・化学的・生物的・地理的・地質的な条件の違いに応じて、それぞれ異なっている。そしてその結果形成される堆積物も多種多様である。
岩石は地上で機械的・化学的風化作用を受けることにより、多くの細かい岩石片となり、また一部は流水に溶け込む。岩石片は重力に起因する斜面崩壊などで滑り落ちたのち、流水や風により運搬される。とくに乾燥気候下では風の影響が強く、風によって運搬・堆積した砕屑粒子が砂漠を形成する。
流水で運搬される粒子は、小さいものでは河川の乱流によって水中に浮遊した状態で下流へ運ばれ、大きい粒子は水中を移動したり水底に落下することを繰り返す躍動によって下流へ移動する。さらに大きい粒子は水底を転がるように転動して移動する。粒子が沈降する場合は、シルトサイズ(粒径16分の1ミリメートル)以下の細かい粒子は「ストークスの法則」に従い、沈降速度は粒子の半径の2乗に比例する。また粗粒砂岩サイズ(1ミリメートル)以上の粒子は「インパクト法則」に従って沈降し、その速度は粒子の半径の2分の1乗に比例する。川底の粒子を移動させるためには、その粒子に相応した流速の水流が必要であり、流速が落ちた場合には粒子は静止し堆積する。河川によって運搬された砕屑粒子は、河底に堆積することもあれば、海にまで運ばれデルタや陸棚で堆積することもある。細かい粒径のものは海流でさらに陸から離れた所へ運ばれる。また、通常の転動・躍動で運搬される以外に、乱泥流によって大量の砕屑物が、海溝や大洋底にまで運搬されることもある。このようにして礫(れき)岩・砂岩・泥岩などの砕屑性堆積物が形成される。
陸地から遠く離れた大洋底では、きわめて微粒の粘土粒子を除いて砕屑物が到達しえないため、有孔虫・放散虫などの生物遺骸が沈積し、堆積物の主要構成物は生物源のものとなる。砕屑粒子が含まれないため、堆積速度はきわめて遅い。有孔虫・放散虫などの殻(から)が堆積しない場合は、赤粘土が堆積する。
また、砕屑粒子・生物遺骸などの堆積以外に、海水中に溶け込んでいた溶質が直接、化学反応によって沈殿する場合も堆積作用の一部であり、一部の石灰岩、ドロストーン(苦灰岩)、チャートなどの中にはこのようにして堆積したものがあると考えられている。
[村田明広]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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