化学辞典 第2版 「スチバン」の解説
スチバン
スチバン
stibane
アンチモンの水素化物.狭義にはSbH3,広義にはアンチモンの水素化物全般(たとえば,ジスチバンSb2H4)と,そのHを置換した誘導体(たとえばジクロロスチバンSbHCl2)の総称.IUPAC命名法(2005年)では,置換命名法で使われるSbの母体水素化物名,および数詞を付けて複核以上の水素化物名をつくるときの語幹.以前はスチビンといわれたが,現在,IUPACは認めていない.しかし,アメリカ化学会や,日本化学会命名法では,有機誘導体語幹はスチビンという(たとえば,トリメチルスチビン(CH3)3Sb[CAS 594-10-5]).【Ⅰ】SbH3(124.78).Zn-SbまたはMg-Sbの合金と,HClまたはH2SO4とを反応させると発生する.または,エーテル中で,SbCl3をLiAlH4で還元してつくる.SbH3分子はSbを頂点とする三方すい型.Sb-H1.707 Å.∠H-Sb-H91.3°.無色,不快臭の気体.融点-88 ℃,沸点-18 ℃.室温に放置しても徐々に分解し,200 ℃ ではすみやかに分解する.水に微溶,アルコール類,二硫化炭素,有機溶媒に易溶.ハロゲンと反応してHXを,硝酸銀と反応してAg3Sbを生じ,これはさらに分解してAgとなる.空気中で点火すると青炎を上げて燃え,Sbを遊離する.これを冷たいガラスなどに当てるとアンチモン鏡を生じる.半導体用Sbの原料.化学物質排出把握管理促進法・第一種化学物質指定,毒物及び劇物取締法・劇物,労働安全衛生法・名称等を通知すべき危険物及び有害物.[CAS 7803-52-3]【Ⅱ】ジスチバン:Sb2H4(247.55).SbH3製造の際に副生する.不安定であるが,有機誘導体は,対応する水素化物よりはるかに安定である.たとえば,(C6H5)3Sbなどは室温でも安定な結晶固体として得られる.[CAS 14939-42-5:Sb2H4][CAS 603-36-1:(C6H5)3Sb]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報