その化合物(溶媒が水の場合は酸化物,水酸化物)が酸性,塩基性両方の性質を示す元素.周期表14族のゲルマニウム,スズ,鉛,15族のヒ素,アンチモンに加えて,ベリリウム(2族),亜鉛(12族),アルミニウム,ガリウム(13族),テルル(16族)など.たとえば,酸化スズ(Ⅱ)SnO,水酸化アルミニウムAl(OH)3や,水酸化ベリリウムBe(OH)2は水に不溶であるが,酸にもアルカリにも溶ける.ベリリウム,亜鉛,アルミニウム,ガリウム,鉛スズなどは単体も酸,アルカリに溶ける.短周期型周期表で見ると,これらの元素は,左上の2族ベリリウムから右下の16族テルルに至る対角線上とその両側に位置する金属,半金属元素で,陽性-陰性元素の境界線付近にあって,ベリリウムを除いて中間的な電子配置をもっている.BeH2,AlH3,GeH4,SnH4,AsH3,SbH3などの共有結合性または共有性の強い水素化物をつくることもその特徴で,これらの元素の電気陰性度が水素の値に近いことを意味する.元素Xの水酸化物XOHで,Xの電気陰性度がハロゲン元素のようにHよりはるかに高いとX-O結合は共有結合性で,電子はXO側に残ってXO- + H+ のように解離して酸であるが,逆にアルカリ金属元素のように低いとX-OH結合がイオン性で電子がOH側にとられてX + OH-のように解離して塩基となる.電気陰性度がHに近いと結合が中間的な性質をもち,XO側が電子を受け入れることも,失うこともできるので両性となる.陽性の強いBeの場合は,いちじるしく小さくて電荷密度の高い BeⅡが結合相手の電気陰性度の高い酸素ですら分極して共有性のまじった結合をつくるためである.スズは酸化状態の低い SnⅡでは両性的であるが,SnⅣでは酸性的である.酸化数の幅が広い遷移金属元素では,中間の酸化数のときに両性を示す.たとえば,酸化数2~6のクロムでは,CrⅡOは塩基性,CrⅥ O3は酸性であるのに対してCr2Ⅲ O3が両性的である.高い酸化状態では,酸素との結合がより共有性となるためと解釈される.ここまでの議論は溶媒が水の場合についてであるが,基本的には液体アンモニアや液体二酸化硫黄のような非水溶媒を媒質とする場合にもあてはまる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
ある元素の酸化物あるいは水酸化物が酸と反応して塩をつくり、また塩基と反応しても塩をつくるようなとき、すなわち両性酸化物あるいは水酸化物をつくるような元素を両性元素ということがある。ただし、両性というのは酸化物あるいは水酸化物につけられたものであって、元素につけたこの語は正しい化学用語ではない。
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