日本大百科全書(ニッポニカ) 「スッタ・ニパータ」の意味・わかりやすい解説
スッタ・ニパータ
すったにぱーた
Suttanipāta
仏教の最初期のパーリ語による経典。スッタは経、ニパータは集まり、あわせて「経集」となるが、多くの翻訳は『ブッダのことば』と題する。その用語や内容などからみて、現在伝わる経典中の最古の資料と考えられている。全5章よりなり、その第4章だけが独立の経として漢訳された(『仏説義足(ぎそく)経』)ほか、一部が個別的に引用されて漢訳もある。それら諸経典への引用からしても、これの古いことが知られる。主要部分はすべて詩(韻文)で、計1149詩を数える。ただし説明のための散文がところどころに付されている。その内容はきわめて素朴で平易でありつつ、人生の真実にそのまま触れ、仏教術語を用いずに、釈迦(しゃか)の教え、ないし原始仏教の核心を、むしろ淡々と語る。仏教思想の源泉を知るのに最適の書といえる。
[三枝充悳]
『中村元訳『ブッダのことば――スッタニパータ』(岩波文庫)』