日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストローブ」の意味・わかりやすい解説
ストローブ
すとろーぶ
Jean-Marie Straub
(1933―2022)
フランス生まれの映画監督。メスに生まれ、少年期をドイツの占領下で過ごす。ストラスブールとナンシーの大学で文学を学ぶ一方、シネ・クラブを組織して多くの映画を見る。1954年にのちに結婚することになるダニエル・ユイレDanièle Huillet(1936―2006)と出会うが、彼の映画はすべてユイレとの共作である。アルジェリア戦争の兵役拒否のため、1959年に1年間の懲役刑を言い渡されるが、西ドイツに逃れ、『マホルカ・ムッフ』(1962)で映画監督としてデビュー。以降ドイツやイタリアで映画をつくった。作品は非常に理知的であり、また観念的でもある。代表作に『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』(1967)、『フォルティーニ/犬』(1976)、『階級の関係』(1984)などがある。1990年以降もストローブは一貫してマルクシストの立場を明確にしており、映画として取り上げる素材もつねに、他者のテクストに基づいていた。小説、オペラ、絵画、政治的書物などが、彼の映画として取り上げられる対象となった。1990年代以降の代表作としては『ロートリンゲン!』(1994)、『今日から明日へ』(1996)、『労働者たち、農民たち』(2000)などがある。
[小松 弘]