すまに(読み)スマニ

デジタル大辞泉 「すまに」の意味・読み・例文・類語

すま‐に

[副]
(「手もすまに」の形で)休まないで一生懸命にの意か。
戯奴わけがためが手も―春の野に抜ける茅花つばなそ召して肥えませ」〈・一四六〇〉
すきまのないさま。
山吹のみぎはも―咲きぬれば」〈散木集・一〉

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精選版 日本国語大辞典 「すまに」の意味・読み・例文・類語

すま‐に

  1. 〘 副詞 〙
  2. 休めずに。忙しく。暇なく。「手もすまに」の形で、手を休めず、忙しくの意で用いられる。
    1. [初出の実例]「戯奴(わけ)がため吾が手も須麻爾(スマニ)春の野に抜ける茅花(つばな)そ食(め)して肥えませ」(出典:万葉集(8C後)八・一四六〇)
  3. すきまなく。
    1. [初出の実例]「山吹の汀もすまに咲きぬれば洗ふさ波もいとなかりけり」(出典:散木奇歌集(1128頃)春)

すまにの語誌

( 1 )上代には「手もすまに」の形しか見えない。「拾遺‐秋」に「手もたゆくうゑしもしるく女郎花色ゆゑ君がやどりぬる哉〈よみ人しらず〉」とあるのが「てもすまに」の言い換えであると見ると、その当時語義を「手を休めず」に近い意に理解していたと考えられる。
( 2 )「霊異記‐中」に「興福寺本訓釈 寝 スミヌル」とあり、「書記‐神代下」の古訓(鴨脚本訓)にも「留息焉」の「息」の字の右に「スミタマフ」とある例などから、「すむ」を休息する意とし、その未然形「すま」に打消の助動詞「ず」の古い連用形「に」の付いたものと解する説が一般的である。ただし、「あしも足掻かに」のような「…モ…ニ」型の副詞派生形の場合、「に」は打消の「に」とは考えにくいことが難点
( 3 )「すま」を「すみやか(速━)」「すむやけし(速━)」の「すみ」「すむ」と同源として、「手も早く」の意と解する説もある。

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