書記(読み)ショキ

デジタル大辞泉 「書記」の意味・読み・例文・類語

しょ‐き【書記】

文字文章を書きしるすこと。「書記能力」
文書作成議事記録などに当たる役。「会議書記をつとめる」
書記官」に同じ。
政党・労働組合などの書記局の構成員。
[類語](1筆記

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精選版 日本国語大辞典 「書記」の意味・読み・例文・類語

しょ‐き【書記】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 文字を書きしるすこと。また、書きしるしたもの。記録。
    1. [初出の実例]「性聰敏、略渉書記」(出典:続日本紀‐天平宝字八年(764)九月壬子)
    2. 「初め此案文を作たる局にて別に大統領の異旨を書記し」(出典:西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉初)
  3. 公文書や会議の議事などを書きしるしたり、管理したりする役。
    1. [初出の実例]「又書記一人朝鮮に行て居る也」(出典:随筆・文会雑記(1782)三)
  4. 禅家の六頭首(ろくとうしゅ)の一つ。寺の文書の製作をつかさどる者。
    1. [初出の実例]「斎安国師の会にいたりて、書記に充するに」(出典:正法眼蔵(1231‐53)行持)
  5. 特に、江戸末期から明治にかけて、遊女屋で事務をとったり、遊女の手紙の代筆などをしたりした者。
    1. [初出の実例]「母は遊女の仕立物、父は小格子の書記(ショキ)に成りぬ」(出典:たけくらべ(1895‐96)〈樋口一葉〉三)
  6. 上司の指揮を受けて文案作成、庶務、会計などにあたる職員。おもに、裁判所や行政庁などの職員をいう。書記官。
    1. [初出の実例]「詩人斯本色(スペンセル)も、始は愛蘭(アイランド)欽差大臣の書記となり」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉九)
  7. 政党や労働組合などの書記局の成員。
    1. [初出の実例]「沖仲仕の組合の書記かなんかしてるんだって」(出典:若い人(1933‐37)〈石坂洋次郎〉下)

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改訂新版 世界大百科事典 「書記」の意味・わかりやすい解説

書記 (しょき)

文字を書き記す人。かつてはその技能をもつのはごく限られた人々であり,古代エジプトでは書記は各分野で重要な役割を果たす官職として尊ばれていた。これがダビデ王時代のユダヤに伝えられ,旧約聖書では〈書記官〉と記されている。ラテン語では〈書く〉を語源とするscribaという語があてられるが,ユダヤ教の教典を記録し解釈する人という意味から,新約聖書では〈律法学者〉の訳が用いられている。いっぽう,書記は王,権力者のもとで,秘密secretumにあずかっているという点をとらえてsecretaryという語も用いられるようになった。狭義の秘書の意のほか,イギリス,アメリカでは大臣・長官の呼称にもなっている(大臣にあたる語としては,補佐役を意味するministerもある)。また,かつてのソビエト連邦共産党中央委員会書記長,国際連合事務総長などの職名はsecretary-generalと呼ばれる。日本の古代においては,文書の記録という意味では〈史〉がこれにあたり(〈(し)〉〈史(ふひと)〉の項目参照),律令制下では四等官の一つ〈主典〉がおもに文書の記草・記録にあたった。中世・近世の武家社会では〈右筆〉が書記の役割をになった。
執筆者:

書記の語は古くから書物,文字で記されたものの意味で使われてきたが,それが文書や記録を書くことを任とする官名になるのは3世紀,魏の曹操の時代からである。中国では文字を扱う記録係の名称として史があり,天子の言動を記録する左史・右史や,歴史を書く史官を頂点に,各役所の長官=令に属する令史や書史などに分化していった。これらも広義の書記と関係するが,漢代では秘書官的な書記として記室の名称が一般的で,三公や大将軍の上奏,書記をつかさどる記室令史などの官があった。この掌書記という言葉が魏・晋以後官名化する。とくに唐中期に節度使の武人支配が出現すると,文人知識人は掌書記になって文書を扱うことが多かった。宋以後,科挙出身者を中心とした文人士大夫官僚と,実務に携わる胥吏(しより)階級が明確に分かれると,中間的な書記の官は令史の流れをひく胥吏の役目とみなされ,節度掌書記などは武人支配の終焉とともに消滅してしまう。
執筆者:

アラビア語で書記あるいは秘書をカーティブkātibとよび,軍人に対して〈筆の人〉と総称され,イスラム諸王朝の技術官僚として活躍した。公文書の作成は,ムハンマド時代以来一貫してアラブ人によって行われたが,地方の行政文書や租税台帳は,初期の時代には中世ペルシア語,シリア語,コプト語などをよくする現地人の非イスラム教徒によって作成され,8世紀以後,ディーワーンのアラブ化とイスラム化につれて現地人マワーリーとアラブ人ムスリムの書記が増大した。アッバース朝(750-1258)時代になって官僚機構が発達すると,ペルシア人マワーリーが有力な書記階級を形成し,シュウービーヤ運動やアダブ(アラブの言語文化全体,教養を表す)文学の担い手となる者もあった。またバルマクBarmak家のように,財務行政の専門知識を生かして一門からディーワーンの長官やワジールを輩出する名家も現れた。軍事政権の成立以後は,官僚の行政権は大幅に縮小されたものの,文書の作成や国家財政を円滑に運用するためには,書記を用いることが不可欠であり,それらの専門的な知識は代々〈家の学問〉として受け継がれた。ブワイフ朝時代イラクのサービー家やアイユーブ朝(1169-1250)時代エジプトのマンマーティー家はその代表である。以上のような官僚としてのカーティブ以外に,ワジールに仕えて文書の作成や家産の管理に当たる秘書としてのカーティブも存在した。これらの秘書が長期間同一人物に仕えることはむしろまれであって,彼らは転々として主人を替え,機会を得てディーワーンの書記となる者も少なくなかったことが特徴である。
執筆者:

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普及版 字通 「書記」の読み・字形・画数・意味

【書記】しよき

記す。

字通「書」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の書記の言及

【右筆】より

…中・近世における武家の書記役。執筆(しゆうひつ)ともいう。…

※「書記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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