内科学 第10版 「スーパー抗原関連腎炎」の解説
スーパー抗原関連腎炎(感染症と腎障害)
概念
1995年にKoyamaらはmethicillin resistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染中または感染後にネフローゼレベルの蛋白尿を伴い急速に腎機能低下を示す感染後腎炎を報告した.その後同様の報告がなされ現在はMRSA腎炎あるいはその発症にスーパー抗原としてMRSAの外毒素の関与が示唆されておりスーパー抗原関連腎炎ともよばれる.
病因
各種細菌が産生する外毒素のなかで,多量のT細胞を活性化する能力をもつものをスーパー抗原とよぶ.MRSAの一部にスーパー抗原となる外毒素を産生するものがありサイトカインの過剰な産生によりT細胞のみならずB細胞も活性化され,免疫複合体を形成し腎炎を惹起すると考えられている.
疫学
MRSA腎炎をはじめて報告した筑波大学のデータではこれまで数十例の報告があるが抗菌薬の開発で近年は著しく減少している.
臨床症状
MRSA感染症後に急速進行性腎炎かつネフローゼ症候群を呈する場合が多数を占めるほか,ネフローゼ症候群,急性腎炎症候群,急速進行性腎炎症候群などの腎炎が報告されている.
腎組織像
腎組織はIgAの沈着を伴う管内増殖性腎炎を呈し,多くは半月体形成を伴うとされている.IgAのほかにIgGやC3が同様に陽性になることが一般的である.
治療
MRSAに感受性のある抗菌薬の投与が必要である.重症例には副腎皮質ホルモンの投与も考慮される.約20%の例は末期腎不全に至るとされている.[山辺英彰]
■文献
Kopp J, Fabian J, et al: Human immunodeficiency virus infection and the kidney. In: Comprehensive Clinical Nephrology (Floege J, Johnson RJ, et al ed), pp675-683, Elsevier, St.Louis, 2010.
Rodriguez-Iturbe B, Burdmann EA, et al: Glomerular diseases associated with infection. In: Comprehensive Clinical Nephrology (Floege J, Johnson RJ, et al ed), pp662-674, Elsevier, St.Louis, 2010.
臼井丈一,河村哲也,他:腎障害をきたす全身性疾患-最近の進歩 MRSA腎炎.日内会誌,100: 1324-1329, 2011.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報