日本大百科全書(ニッポニカ) 「ズボンをはいた雲」の意味・わかりやすい解説
ズボンをはいた雲
ずぼんをはいたくも
Облако в штанах/Oblako v shtanah
ソ連の詩人マヤコフスキーの長詩。1915年作。プロローグと「きみらの愛を倒せ」「きみらの芸術を倒せ」「きみらの機構を倒せ」「きみらの宗教を倒せ」の四つの部分からなり、作者自身「今日の芸術の教義問答」とよんだ。ロシア未来派の手法を駆使して作者の若々しい情念と徹底した反抗的理念を歌い上げ、20世紀ロシア詩の革命直前の一つの頂点となった作品である。恋人の裏切りに触発された激情から、炎上する心臓、大都会のゴルゴタ、蜂起(ほうき)とその挫折(ざせつ)へと、先鋭なイメージが連鎖し、ついには最高の秩序維持者=神を呪(のろ)う最強音へと高まる。「ぼくの精神には一筋の白髪もない」。
[小笠原豊樹]
『小笠原豊樹訳『ズボンをはいた雲』(『世界詩人全集5』所収・1969・新潮社)』