日本大百科全書(ニッポニカ) 「ズラトブラツキー」の意味・わかりやすい解説
ズラトブラツキー
ずらとぶらつきー
Николай Николаевич Златовратский/Nikolay Nikolaevich Zlatovratskiy
(1845―1911)
ロシアの小説家。下級官吏の家庭に生まれる。ペテルブルグ工科大学を中退。作家としてのデビューは1866年。当初は労働者の生活を主要なテーマとしたが、70年代なかばから農村問題をテーマとするようになり、ナロードニキ的立場を明らかにした。しかし80年代末あたりから、あまりに農村共同体(オープシチナ)を理想化し、民衆(ナロード)の知恵を神秘的に崇拝しすぎるとの批判を受け、彼自身も危機を感じて、幻滅とペシミズムの色彩を濃くする。代表作は、共同体と搾取者・富農との戦いを描いた『礎(いしずえ)』(1878~83)。ほかに『少・青年時代』(1908~11)などの回想録や連作自伝短編集『かくありき』(1890、1911)も貴重である。
[小平 武]