日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼンメリンク」の意味・わかりやすい解説
ゼンメリンク
ぜんめりんく
Samuel Thomas von Sömmering
(1755―1830)
ドイツの解剖学者。医師の子としてトルン(現、ポーランド)に生まれた。アルビヌス筋(笑筋と中斜角筋)で知られるライデンのアルビヌスBernhard Siegfried Albinus(1697―1770)や、ブールハーフェ、シュタールらに師事し、ついでゲッティンゲン大学で医学を学んだ。カッセル、マインツ、ミュンヘン、フランクフルト・アム・マインの各大学教授を歴任。神経系の解剖学に多くの業績をあげ、ゼンメリンクの黒質(ただし「黒質」はフランスの解剖学者ダジールFélix Vicq d'Azyr(1746―1794)の命名)、ゼンメリンク神経(後大腿(こうだいたい)皮神経の会陰(えいん)枝)などに名を残している。とくに、それまでウィリスによって9対とされていた脳神経を今日のように12対に整理し直したことで名高い。著書に『脳神経の起始と脳底について』(1778)、『人体の構造について』(1791~1796)などがあり、とくに後者はその後長らく代表的な解剖学書として名声を博した。
[澤野啓一]