日本大百科全書(ニッポニカ) 「カッセル」の意味・わかりやすい解説
カッセル(Gustav Cassel)
かっせる
Gustav Cassel
(1866―1945)
スウェーデンの経済学者。ストックホルム大学、ウプサラ大学に学び、最初は技術者となったが、30代になってから経済学の研究に転じた。ウィクセルのよき競争相手であり、ルンド大学教授の地位をめぐってウィクセルと競ったこともあるが、急進的な思想のウィクセルに対する保守派の人々の学問外の面からの反対に抗議して、カッセルは自らその願いを取り下げたというエピソードもある。1904年にストックホルム大学教授に就任し、1933年までその地位にあった。カッセルは、価値理論の面では、限界効用という測定不可能な概念を排して、経験的に確認できる需要関数から分析を始めるべきであると主張した。また、景気変動理論では、その原因を経済成長過程における固定資本投資の変動に求め、消費財の需要の変化に対してそれよりも大きく資本財生産が反応し、景気の上昇過程では強制貯蓄によって利潤が賃金を侵食し過剰投資がおこるという、過剰投資説を展開した。しかし彼のもっとも著名な業績は、第一次世界大戦後の国際通貨の混乱期に、外国為替(かわせ)相場は究極的には各国における貨幣の購買力の比によって決まるとする購買力平価説を提唱したことである。おもな著書には、『社会経済学原論』Theoretische Sozialökonomie(1918)、『貨幣および外国為替論』Money and Foreign Exchange after 1914(1922)などがある。
[志田 明]
カッセル(ドイツ)
かっせる
Kassel
ドイツ中部、ヘッセン州の都市。人口19万4800(2000)。ウェーザー川の支流フルダ川の流れる盆地にある。1198年ごろ都市権を獲得、1277年にヘッセン公の居地になり、近世には要塞(ようさい)都市になった。19世紀にはヘッセン選帝侯領の首都になるなど王宮所在地としての伝統が長く、市街中心部にはバロック時代の城館(1786~1801建築)と森林公園が残る。第二次世界大戦後の戦災復興過程で近代的都市に生まれかわり、自動車、機械、化学、電気機器などの工業が立地する。ヘッセン州北部の中心都市で、連邦労働裁判所、連邦社会保障裁判所のほか、州・地方レベルの行政・経済・文化の諸施設、商業、金融業も集中する。
[朝野洋一]