日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソナー航法」の意味・わかりやすい解説
ソナー航法
そなーこうほう
ソナーを用いる船の航法。ソナーは、全体積の1/2~7/8が水面下にあって目視やレーダーでは見落としやすい氷山、とくに小氷山の探知に有効で、極地方の氷海航海にはなくてはならない航法装置である。
ドップラー効果を利用して、超音波の発信周波数と受信周波数の差から、発受信器を備えた船の、反射体(海底や水中浮遊物)に対する相対速度が測定できるようになると、測程儀(ログ)や接岸援助に用いられ、ついで航法用への利用も図られた。船の正横方向にもドップラーソナー・ログを設備すると、船の前後・左右の相対速度が検出され、時間で積分して距離に直せば、推測航法と同じ理論で出発点に対する現在位置が求められる。
船の前後・左右の傾きや縦横の動揺(これらの影響を除くために前後・左右各一組みのビームが用いられる)、温度・塩分・水深などによる水中音速の変化・吸収・散乱・屈折、海底の起伏、粗度、底質など、誤差の原因も多く、航海用として満足できるものではないが、水中自蔵航法として用いられる。
[川本文彦]