日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソナー」の意味・わかりやすい解説
ソナー
そなー
sonar
音波を利用して海底、船舶、魚群その他の物標(目標となる物)との距離を測定し航海の用に供する装置。sound navigation and rangingの略語。パッシブソナーassive sonarとアクティブソナーactive sonarの2種がある。パッシブソナーは、船舶や魚が発する音の方向、距離、強さなどを測定する受信専用ソナーである。アクティブソナーは、音波を発射して物標からの反射音を受信し、方位、距離を測定する方式で、水平ソナーと垂直ソナーに分類される。ただし、垂直ソナーは通常、音響測深機、魚群探知機などとよばれ、ソナーといえば水平ソナーをさすのが普通である。
ソナーは、ある方向に送波器を向けて音波のパルスを発射し、その方向からの反射波を受信してから次の方向に向けて同じ過程を繰り返すのが原則である。この点ではレーダーと同じであるが、水中音波の速度は毎秒約1500メートルと遅いので、アンテナを速く回転することができないから、パルスの繰り返し周波数を低くしなければならず、特別のくふうが必要なので、次のような方式がある。
(1)扇形(せんけい)走査方式 船首を中心として左右数十度だけを走査する。
(2)螺旋(らせん)状探査方式 送波器から全方向にパルスを発射し、ビーム幅の小さい鋭い指向性をもつ受波器を高速度で回転させて、各方向から帰ってくる反射波を次々に受信する。
(3)多重探査方式 螺旋状探査方式で1個の受波器を回転させるかわりに、鋭い指向性の受波器を円周上にいくつか装備しておき、これを順次切り替えて受信する。
ソナーの表示では方向と距離と水深の三つの情報が必要なので、平面的な画面に表しにくいが、表示の方法もいろいろとくふうされている。
ほかにドップラーソナーとよばれるものがあるが、これは方位・距離を測定するものではなく、音波のドップラー効果を利用して船の速力を測定する装置である。
[飯島幸人]
『伊関貢・庄司和民著『航海計器学』(1950・海文堂)』▽『飯島幸人・林尚吾著『航海計測』(1986・成山堂書店)』▽『岡本幸雄著『電波機器と超音波機器――レーダから魚群探知機まで』(1987・無線従事者教育協会・CQ出版発売)』▽『米沢弓雄著『基礎航海計器』(1995・成山堂書店)』▽『田口一夫・田畑雅洋著『海洋計測工学概論』(1997・成山堂書店)』