日本大百科全書(ニッポニカ) 「タナバタメギス」の意味・わかりやすい解説
タナバタメギス
たなばためぎす / 七夕眼鱚
rose Island basslet
[学] Pseudoplesiops rosae
硬骨魚綱スズキ目メギス科タナバタメギス亜科に属する海水魚。日本では奄美(あまみ)大島、西表島(いりおもてじま)の海域から知られ、世界ではサモア諸島のローズ島、オーストラリア北西岸、モルジブ諸島など西太平洋、インド洋に分布する。体は細長い楕円(だえん)形で、やや側扁(そくへん)する。体高は体の中央部付近でもっとも高い。目は小さく、眼径は体長の3.1~3.2%。吻長(ふんちょう)は眼径とほとんど同大。鰓孔(さいこう)上に1枚の有孔鱗(ゆうこうりん)があるが、側線は認められない。鰓孔の前端から尾びれの基底までの縦列鱗数は26~29枚。背びれは鰓孔上方から始まり、1本の弱い棘(きょく)と22~23本の分枝軟条からなり、背びれの棘部と軟条部の間に欠刻(切れ込み)がない。臀(しり)びれは弱い1棘と13~14軟条。腹びれは1棘3軟条で、軟条は細長くて、その後端は肛門(こうもん)を越える。尾びれの後縁は丸い。体は前半部では赤桃色で、後半部では淡褐色。目の後ろの縁に暗灰色から黒色の広い帯がある。上下両顎(りょうがく)は淡褐色。腹びれは黄色。沿岸の水深3~20メートルの転石や死サンゴの下、サンゴの穴の中などに潜む。小形の無脊椎(むせきつい)動物を食べる。小形種で、最大体長は2.3センチメートルである。奄美大島や加計呂麻島(かけろまじま)の海域から知られているもう1種のオオメタナバタメギスP. knightiは目が大きくて、眼径が体長の10.6~12.1%であること、腹びれは肛門に達しないことなどで、本種と区別できる。
本種が属するタナバタメギス亜科は、背びれと臀びれの棘がそれぞれ1本で、背びれの棘部と軟条部の間に欠刻がなく、側線がないのが顕著な特徴である。本亜科は以前タナバタメギス科として取り扱われていたが、体節的な特徴の多くの類似性に基づいてメギス科に編入された。一方、本亜科は腹びれが肛門を越えるなどのタナバタウオ科魚類の特徴を共有していることから、和名は両科の特徴に由来する。
[尼岡邦夫 2022年7月21日]