タボル派(読み)タボルは(その他表記)Táborité[チエコ]

改訂新版 世界大百科事典 「タボル派」の意味・わかりやすい解説

タボル派 (タボルは)
Táborité[チエコ]

15世紀前半,異端の罪で処刑されたボヘミアの宗教改革者フスの教説を守り,教皇側に立つ神聖ローマ皇帝に対し反乱を起こしたフス派内の急進的一派。彼らが1420年に南ボヘミアのセジモボ・ウースチーSezimovo Ústí近くの山に建設した城塞都市タボルTábor(正しくはターボル)を闘争拠点としたことからこの名がある。軍司令官ジシュカの率いるフス派軍の主力として,20年から31年まで5回にわたって皇帝軍を撃破し,のちには国外遠征を行う。教会を否定し,聖書のみによる信仰を唱え,財産共有制を厳格に実施するタボル派(農民,職人,下級聖職者)は,やがて,教会領の没収,〈パンとブドウ酒の形色(けいしき)による(スブ・ウトラクエ・スペキエ)〉聖体拝領の自由を獲得して満足するウトラキスト(市民,下層貴族)との内部対立を先鋭化し,31年のバーゼル公会議でウトラキストがカトリック派と妥協したことで内戦に発展した。タボル派は34年のリパニLipanyの戦で破れたのちに,しだいに瓦解していった。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「タボル派」の解説

タボル派(タボルは)
Tabor

フスの教会改革運動の推進者のうち最も過激な一派。15世紀前半のチェコにおいて,農民や下層市民からなる,厳格な聖書主義にもとづく禁欲的な平信徒の共同体を形成した。その拠点たるボヘミア城市の名にちなんでこう呼ばれる。

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世界大百科事典(旧版)内のタボル派の言及

【フス派戦争】より

…そのためジギスムントは教皇マルティヌス5世の勅書を受けて,フス派討伐の十字軍をボヘミアに差し向けたが,軍事指導者ジシュカに率いられたフス派軍はプラハ郊外のビトコフVitkovの丘で十字軍を粉砕した(1420年7月)。 フス派には,大別して南ボヘミアの城砦都市タボルを拠点として終末論的信仰をもち,農民,職人,下層騎士から成る急進的なタボル派と,平信徒も聖杯をもつことを主張した,プラハの都市貴族,大学を中心としたいわゆるウトラキスト派Utrakvistéまたはカリックス派Kališníceと呼ばれる穏健な改良主義者の2派があった。1420年,ウトラキスト派の指導者ロキツアナJan Rokycana(1397以前‐1471)は,(1)神のことばの自由な説教,(2)平信徒によるパンとブドウ酒の両形色における聖体拝領,(3)聖職者の無一物の使徒的生活と道徳的高潔さ,(4)当局による大罪を犯した者に対する処罰(〈プラハの4ヵ条〉)を提示し,カトリック教会と交渉しようとしたのに対し,タボル派は,教会組織を拒否し,厳格な規律による財産共有制をとり,武器をもって神の王国を建設することをめざした。…

※「タボル派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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