精選版 日本国語大辞典 「共同体」の意味・読み・例文・類語
きょうどう‐たい【共同体・協ケフ同体】
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人間が共同生活を行っているところにできる特定の社会をいう。では、なぜ人間はそういう社会をつくるのか。それは人間の本質的要素の中に、一般には本能とよばれているが実はDNA(でぃーえぬえー)(デオキシリボ核酸の略語。遺伝子の本体)によって決められている「集団欲」という欲求があるからである。その欲求を満たすために、人間は生活や行動の諸様式、いいかえると文化を入れる器としての「社会」や「集団」をつくるのである。社会学者のマッキーバーが、人間は生の共同や連帯にかかわりのある社会をつくるといい、それがコミュニティ(地域共同社会)であると考えたのは、まさに的確な判断であったといえよう。このコミュニティの概念は、アソシエーションassociation(結合社会)の概念に対するものとして彼がつくったものである。彼によればコミュニティとは、地域性と共同性をもち、内部は地域共同社会感情によって支えられるという基礎的な諸条件を備えた社会であるとする。
マルクスは、共同的土地所有といったような物質的基盤に、共同体の成立の根拠があると考えた。土地を共同で所有している以上、その農耕作業も、やがてはその他の社会生活も共同にせざるをえない。彼は、共同体は、資本主義的生産に先行する形態だと考えた。そしてそれは、生産する諸個人が自然という性質を帯びざるをえない原始共同体ursprüngliche Gemeinschaft(ドイツ語、以下同)から、諸個人が大地の諸断片を占取して農耕生産を行っていく農業共同体Agrargemeindeへと歴史的に発展するとした。その場合、原始の段階で生じた共同組織Gemeinwesenが、封建社会の終末に現れた農業共同体まで、絶えず根底にあったと考えた。共同体は、そういう共同組織を根底に残す限りにおいて共同体たりえたのだという。
マルクスはまた、共同体の歴史的形態として、アジア的共同体、古典古代的共同体およびゲルマン的共同体の三つの形態をあげている。そしてそれぞれは、本質的には、部族共同体、都市共同体および村落共同体にあたるとしている。このように、ゲルマン的共同体は、封建体制下にできた村落共同体だとされるのであるが、マックス・ウェーバーは、同じ村落共同体について、次のような理念型をつくった。すなわち、それは、封鎖性Geschlossenheitと平等性Gleichheitを二つの支柱としてできた村落社会であるとする。以上のような資本主義社会以前の状態についてマルクスやウェーバーがつくった理論に対して、資本主義社会すなわち近代に入ってからの状態を理解するには、むしろマッキーバーの理論のほうが適当だろう。彼は、コミュニティを、国民社会、地域および町や村の範囲で考えている。
日本の社会について考える場合、江戸時代の村を理解するには、マルクスやウェーバーの村落共同体理論が参考になる。また明治以降、近代に入ってからでも、封建遺制の残っている農村では同じことがいえよう。しかし、そうでない開放的な所では、マッキーバーのコミュニティ理論のほうが適当であろうし、1980年代に入ると都市・農村コミュニティという考えも出ている。さらに進んで、1990年代以降著しくなったグローバリゼーションglobalization(地球規模化、拡大化を意味する英語)の傾向のなかでのコミュニティの変容も見落としてはならない。すなわち国境を越えた、地球レベルの世界コミュニティの出現が問題となっている。これは、国際連盟などを基礎にした共同化のことだが、現在ではまだ、「理論上」の「願望」というに近い。それと同時に、村や町あるいは地域を範囲とするコミュニティも、それぞれ拡大化の動きをみせているのである。
[二宮哲雄]
『M・ウェーバー著、濱島朗訳『家産制と封建制』(1957・みすず書房)』▽『住谷一彦著『共同体の史的構造論――比較経済社会学的試論』(1963・有斐閣)』▽『二宮哲雄著『日本農村の社会学』(1967・誠信書房)』▽『R・M・マッキーヴァー著、中久郎・松本通晴監訳『コミュニティ』(1975・ミネルヴァ書房)』▽『園田恭一著『現代コミュニティ論』(1978・東京大学出版会)』▽『二宮哲雄他編著『都市・農村コミュニティ――社会学の理論と実証』(1985・御茶の水書房)』▽『倉田和四生著『都市コミュニティ論』(1985・法律文化社)』▽『蓮見音彦・奥田道大編『21世紀日本のネオ・コミュニティ』(1993・東京大学出版会)』▽『西村豁通・竹中恵美子・中西洋編著『個人と共同体の社会科学――近代における社会と人間』(1996・ミネルヴァ書房)』▽『K・マルクス著、手島正毅訳『資本主義的生産に先行する諸形態』(大月書店・国民文庫)』▽『大塚久雄著『共同体の基礎理論』(岩波現代文庫)』
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…しかしなかでも,送り手と受け手の間に教養,体験,関心などの違いでコードにずれがあったり(世代間ギャップや異文化接触など),憎悪や不信があったり(信頼度credibilityギャップ)すると,それが障壁barrierとなり,コミュニケーションの成立を阻害する。
【コミュニケーションの変質】
近代以前の人間は,風俗習慣,言語,宗教,思想,道徳などの領域にそれぞれ絶対優勢コードのある狭い生活環境(コミュニティcommunity,ドイツ語でゲマインシャフトGemeinschaft)の中で生活していた。身分や性や年齢などの違いで併存競合コードはいつもあったが,反対抵抗コードは異端,一揆,侵略などの形でごくまれに一時的,部分的に生じたにすぎない。…
…コミュニティという語は,(1)原始共同体,村落共同体というように歴史学的概念として使われることが最も多いが,(2)社会学的概念としても使われる。(1)については〈共同体〉の項目を参照されたい。ここでは地域社会を分析,記述する用語として規範的かつ積極的意味を込めて用いられた社会学的概念について述べる。しかし,(1)と(2)の間に共通性のあることも見逃せない。それを抽出することによって,より高い抽象度をもったコミュニティまたは共同体という用語の意味内容ばかりでなく,コミュニティ(共同体)がいかなる条件に支えられて生み出されるかという点についても理解を深めることができる。…
…森林でも草原でも河川でも海岸でもよい。いや,家の庭でも団地の周りでも公園でもがまんしよう。そこに生えている植物の種類はただ一つではあるまい。小さい下生えや雑草がいくつかは少なくとも存在するはずだ。その葉を食べ,花にみつを吸いにくる昆虫もいよう。鳥たちもときにはやってきて虫を食ったりしているかもしれない。土を少々掘り返してみれば,ミミズなどのうごめくこともあろう。目を凝らして見れば,長さ1mm程度の小さい動物はたいてい見つかるはずである。…
…これに対して原始共産制は,人類史の初期の社会状態に対する後代の理論的構成物であるが,次のような点で共産主義の諸原則を実現しているとされる。すなわち(1)搾取の余地のない生産力の低位を前提とし,(2)食糧・道具・武器の,自然の供給源であり住居でもある大地を,人間集団が共同で占拠し外敵に対して防衛するという意味での〈共有〉を基礎とし,(3)経済の自然的社会性(貨幣関係を媒介しない共同労働と直接消費)が,(4)諸個人の共同体への埋没(個人的人間の未成熟)によって実現している。それは人類が定着経済(牧畜,農耕)を開始する以前(これまでの人類史の大部分)にあたる。…
…コミュニティという語は,(1)原始共同体,村落共同体というように歴史学的概念として使われることが最も多いが,(2)社会学的概念としても使われる。(1)については〈共同体〉の項目を参照されたい。…
…〈村落〉および〈共同体〉の概念は,社会学,経済学,歴史学,農学などの分野で,それぞれ多様な含意をもって用いられるので,村落共同体を一義的に規定することはきわめて困難である。しかし,近代以前の社会をおおっている共同組織のうちで,およそ次のような特徴がある場合を村落共同体と呼んでいるといってよい。…
…このほか,村はずれにはこうした権利・義務をもたないいわゆる〈小屋住農〉や新参の移住者が住みついた事例も多いが,彼らは原則として〈むら〉の構成員ではなかった。これを要するに,古いしきたりとして歴史的に形成された共同体的な諸規制が,〈むら〉本来の構成員の団体意識を高める役割を果たしたのであり,領主による恣意的な収奪,とりわけ伝統的に共有地であるはずの入会地への領主の侵害などに抵抗する自治の法理,つまり〈良き旧き法〉を死守すべきだとする意識が,すでにそこに根強く育成され潜在していたのである。16世紀に勃発するドイツ農民戦争の背景も,あるいはスイスに今も残る村落自治の伝統も,この事情を無視しては考えられない。…
※「共同体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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