翻訳|community
生活の共同性がいちじるしい社会集団。ドイツ語ではゲマインシャフトGemeinschaft,ゲマインデGemeindeという。理念的には,その共同性が生活のすべての面に及ぶ集団を考えることができるが,現実にはそうした共同体は稀有である。人類学者によってホルドhordeとかバンドbandと呼びならわされている採集狩猟民の社会集団がそれに近いが,その場合にも,たとえばすべての労働が共同労働の形で営まれるわけではなく,個別労働の占める部分が大きい。労働の成果もつねに共有・共同消費されるとはかぎらない。生産手段が共有されている場合でも,個別労働の成果は個人所有の対象とされている。しかし,それにもかかわらず,基本的な生産手段である土地を共有し,ときに応じての共同労働,共同防衛と,集団成員相互の互酬関係とによって,生活の安全を確保する組織としての共同体は実在する。共同体は生きるための組織であり,その機能は人々の生活保障にある。いうまでもなく,こうした共同体は,生産力の幼弱な状況から必然的に生みだされたものであり,生産力段階がそれを必要とするかぎり,共同体の維持・存続は至上命令である。したがって,そこに共同体成員の行動を規制する社会規範が存在するのは当然のことである。これが共同体規制と呼ばれるものであり,共同体は社会統制の場でもある。こうして共同体は経済的に自立し,共同体規制によって統合された自律集団をなす。共通の集団帰属感情によって成員相互が強く結ばれることもまた当然である。
このような共同体の存在は,およそ考えられるかぎりで最も原始的な経済段階にある採集狩猟民のあいだに,現実にみられるものである。これを原始共同体もしくは共同体の原初形態と呼ぶことができよう。この原始共同体にあっては,一定地域のうえに生活の各種の共同組織が累積している。ところが,生産力の発展に伴って生活の機能分化が進むと,生活の共同性が薄れ,共同性の機能分化も生ずるに至る。そして,機能別の共同組織がこれまでの地域の枠にとらわれずに作られるようにもなる。原始共同体の解体といってよい。しかしこの場合にも,土地とか水といった基本的生産手段を共有し,これを維持するための共同体規制をもつ組織が存在するならば,かりに他の生活諸部面の共同性は欠くにしても,これはやはり共同体と称してよかろう。マルクスはそうした立場から,原始共同体Urgemeinschaftが解体したのちの共同体Gemeindeの歴史的諸形態として,アジア的,古典古代的,ゲルマン的の三つの共同体の形態を分類した。歴史学とくに社会経済史学者には,このマルクス流の共同体概念をとるものが少なくない。これに対して社会学では一般に,生産関係を直接考慮することなく,共属感情をもって生活している人々のつくる地域社会(コミュニティ)を共同体と称している。このような地域社会がかりに補完的生活保障機能をもつならば,それを共同体と称してもさしつかえあるまいが,ただしそれはあくまでも副次的な共同体というべきであろう。
執筆者:石川 栄吉
歴史学における共同体の概念は,生産様式を基底に歴史的社会全体のあり方を抽象するものとして,主として前近代の社会のあり方を近代市民社会と対比する形でとらえているところにその特徴がある。人類はいかなる時代においても社会をなし,諸個人が相互に依存しあって生きてきた。近代ではこの相互依存関係は直接目に見えない。生産・分配は,社会全体から客観的に見ればここでも人類の再生産のために行われているが,個々人にとっては私的動機のために行われ(商品生産),私的行為が貨幣関係に媒介されてはじめて社会性が実現する。近代以前の諸社会においては人類的な広がりをもった社会的連関はまだ成立していない一方,人々の再生産がその中で行われている狭い圏の内部では社会性が直接実現されている。生産の目的は,個々人にとっても消費(使用価値)であり,分業は貨幣に媒介されずに直接,社会的に編成される。人々が抽象的個人(市民)に分解されることはなく,社会的有機体の中に具体的に配置される(身分など)。このような人々の再生産の圏が共同体である。
マルクスによれば,産業資本の成立は人格的自由と直接労働者の生産手段からの分離(いわゆる〈二重の自由〉)を前提し,そのどちらも共同体の解体の中から生ずる。近代市民社会の成立を,私的個人が共同体関係の解体から現れてくる過程として歴史的に分析したのが,大塚久雄,高橋幸八郎らいわゆる大塚史学の人々である(《講座西洋経済史》1960)。ここで研究対象となっている共同体は,主として村落共同体,都市共同体およびギルドである。たとえば村落共同体においては,主要な生産手段である耕地は共同体成員たる個々の農民の所有であるが,その現実の利用は共同体の規制(耕作強制)の下にあり,また共同体全体の所有である共有地が各農家経営の不可欠の補完物となっている。この共同体は自立した農民たちの自覚して選んだ協同組織ではなく,そこに属することによってはじめて農民となりうるような所与の共同団体である。
→近代社会
共同体そのものはこのような現実の再生産の圏であるが,重要なことは,共同体が社会の基礎となっているところでは,政治的支配関係をも含めた全体としての社会が,共同体的な性格を帯びるということである。人類史の最初期にあった原始的共同体は,土地領有の主体であり,共同労働・分配消費がなされる場であるが,個々の具体的な団体のみならず,私的個人が成立せず,基本的に私有財産がなく,人々が支配や貨幣の媒介なしに直接結びあっているような社会関係のあり方をもさしている(原始共産制)。定着経済がはじまると定着のされ方に応じて社会(共同体)のあり方はさまざまな形態をとる。マルクスの《資本制生産に先行する諸形態》(1857-58執筆)は1953年に公表,刊行されて以来,そこに述べられた共同体の諸形態が,文化人類学的な共同体の諸タイプではなく,文明以後の人類史の段階的諸時代をそれぞれ規定する展望をきりひらく内容をもっていたため,歴史理論に大きな影響を与えた。それらはいずれも経済的再生産を行う個々の共同体のみならず,政治的上部構造をふくんだ社会全体の抽象物でもある。
〈アジア的共同体〉は土地所有主体である東洋(オリエント)的共同体を基礎とし,個々の成員は共同所有者であり,小農民が自立して労働する場合でも自分の働く個々の地片に対しては私的占有者にとどまる。農耕が共同で行われなくとも水利などのために共同労働がなされ,織布など小農民の家内副業や,鍛冶などほとんどいっさいの分業が共同体内の直接消費のために組織される。アジア的専制君主は,これら小共同体の統合を体現する上位統一体の人格的表現である。君主の臣下に対する専制支配は,個人が共同体の部分にすぎないことにもとづいており,社会全体における分業が,社会全体を人格的に表現する専制君主への義務の形で,直接,労働によってなされる(M. ウェーバーのいうライトゥルギー国家)。〈古典古代的共同体〉は,生産の前提となる土地を獲得し防衛する軍事的共同体であり,生産については個人(農民家族)が自立している。ここでは軍事的共同体の一員という資格(=市民)によって個人は共同体の土地の一部を分与され(ローマ的私的所有),分配されない土地が公有地として留保され,新市民へのファンドとなり,また貴族たちに利用される。ここでは共同体は生産のためではなく,外国や奴隷に対する政治組織であり,共同労働は戦争に現れる。〈ゲルマン的共同体〉においても,古典古代的共同体と同様に自由な小土地所有が行われるが,ゲルマン人は互いに離れて自給的農業経営を営むので,軍事的にも結集しない。ここでは共同体は個々の土地所有者たる農民家族の,所有と生命の相互保障,紛争処理などのための同盟である。ここにも共有地はあるが,その利用は個々の農民が行い,共同労働はない。このイメージはタキトゥスが《ゲルマニア》で描く古ゲルマン社会には似ていなくもないが,中世の村落共同体とはまったく異なる。それはむしろ中世盛期までの封建的支配者たちの相互関係(=封建的共同体,封建制度)を示唆する。このようにマルクスの描く共同体は,人類史の諸時代(オリエント,古典古代,ヨーロッパ封建社会)のそれぞれの歴史的前提であるとともに,これら諸時代の社会全体のあり方を抽象したものとなっている。
執筆者:熊野 聰
共同体はそれ自体一つの局地的小宇宙としての孤立性をもつものであった。低い生産力と自給的な経済との下で成員と共同体そのものの再生産をはかる必要から,共同体の内部に対しては階層分化を抑制する意味での平等性が強調され,相互に兄弟のような親しさをもって関係しあうことがもとめられたが,逆に共同体の外部に対しては,成員の再生産をささえる共同体的土地所有をまもるという意味からも封鎖性が強調された。このような二重性は共同体の経済・倫理の特質であった。また,共同体においては,私的所有に基礎をおく個々人の私的労働と,共同体的所有に基礎をおく共同労働との間に緊張関係が生じるが,共同体が自給的な生産構造と封鎖的な小宇宙の下で,共同体によって所有された土地の利用を,個々人の生活の再生産にとって不可欠のものとするかぎり,私的労働は共同労働によって制約されざるをえない。ここに共同体的規制が成立する。共同体的規制は,成員と共同体の再生産を確保するために,個々人の行動に対して共同体の名において行われる規制であるが,その規制は共有地の利用管理にとどまらず,私有地の耕作をはじめ成員の私的領域に広くおよんだ。
封建社会における農村を構成したのは村落共同体である。ヨーロッパ中世の農村では耕地の私有と牧野・林野などの共同体的所有によって村落生活が行われていたが,耕地は開放耕地制度や三圃制度下にあり,きびしい耕作強制がみられた。
日本の村落は近世の幕藩体制の下で藩政村として再編成された。水田を中心とした耕地は私的所有にゆだねられていたが,水田耕作にもとづく用水路や溜池などの灌漑施設の管理と採草地や林野などの入会(いりあい)的な共同所有などの形態をとった共同体的所有がそれを補完していた。さらに封建体制の下で村落が連帯して年貢を納入する単位とされたのをはじめ,封建的な統治の単位としてさまざまな役割を負うようになったことから,きわめて緊密な連帯が作りあげられた。その後,資本主義の形成にあたって,ヨーロッパの近代社会への移行過程でみられたような激しい農業革命を経ることがなく,しかも地主制の発展の中で農村の旧来の社会関係を利用した支配が続けられたことから,農村にはながく村落共同体と区別しがたい社会形態が見いだされた。第2次世界大戦後,農地改革が行われて地主制が廃絶され,さらにその後の経済の高度成長にともなって農村の自給性や封鎖性が解体され,ようやく共同体的規制は薄れたものの,農民にとって村落は抗しがたい意味をもち,なお共同体の残存が指摘される。これに対して,共同体の解体による近代的な個人の主体性の確立が強調される一方で,共同体が外部からの攻撃に対して成員を共同で防衛する機能をもっていたことに注目し,今日の村落に共同体としての抵抗の機能を求め,農村問題解決の主体性を期待する主張もみられる。
執筆者:蓮見 音彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
人間が共同生活を行っているところにできる特定の社会をいう。では、なぜ人間はそういう社会をつくるのか。それは人間の本質的要素の中に、一般には本能とよばれているが実はDNA(でぃーえぬえー)(デオキシリボ核酸の略語。遺伝子の本体)によって決められている「集団欲」という欲求があるからである。その欲求を満たすために、人間は生活や行動の諸様式、いいかえると文化を入れる器としての「社会」や「集団」をつくるのである。社会学者のマッキーバーが、人間は生の共同や連帯にかかわりのある社会をつくるといい、それがコミュニティ(地域共同社会)であると考えたのは、まさに的確な判断であったといえよう。このコミュニティの概念は、アソシエーションassociation(結合社会)の概念に対するものとして彼がつくったものである。彼によればコミュニティとは、地域性と共同性をもち、内部は地域共同社会感情によって支えられるという基礎的な諸条件を備えた社会であるとする。
マルクスは、共同的土地所有といったような物質的基盤に、共同体の成立の根拠があると考えた。土地を共同で所有している以上、その農耕作業も、やがてはその他の社会生活も共同にせざるをえない。彼は、共同体は、資本主義的生産に先行する形態だと考えた。そしてそれは、生産する諸個人が自然という性質を帯びざるをえない原始共同体ursprüngliche Gemeinschaft(ドイツ語、以下同)から、諸個人が大地の諸断片を占取して農耕生産を行っていく農業共同体Agrargemeindeへと歴史的に発展するとした。その場合、原始の段階で生じた共同組織Gemeinwesenが、封建社会の終末に現れた農業共同体まで、絶えず根底にあったと考えた。共同体は、そういう共同組織を根底に残す限りにおいて共同体たりえたのだという。
マルクスはまた、共同体の歴史的形態として、アジア的共同体、古典古代的共同体およびゲルマン的共同体の三つの形態をあげている。そしてそれぞれは、本質的には、部族共同体、都市共同体および村落共同体にあたるとしている。このように、ゲルマン的共同体は、封建体制下にできた村落共同体だとされるのであるが、マックス・ウェーバーは、同じ村落共同体について、次のような理念型をつくった。すなわち、それは、封鎖性Geschlossenheitと平等性Gleichheitを二つの支柱としてできた村落社会であるとする。以上のような資本主義社会以前の状態についてマルクスやウェーバーがつくった理論に対して、資本主義社会すなわち近代に入ってからの状態を理解するには、むしろマッキーバーの理論のほうが適当だろう。彼は、コミュニティを、国民社会、地域および町や村の範囲で考えている。
日本の社会について考える場合、江戸時代の村を理解するには、マルクスやウェーバーの村落共同体理論が参考になる。また明治以降、近代に入ってからでも、封建遺制の残っている農村では同じことがいえよう。しかし、そうでない開放的な所では、マッキーバーのコミュニティ理論のほうが適当であろうし、1980年代に入ると都市・農村コミュニティという考えも出ている。さらに進んで、1990年代以降著しくなったグローバリゼーションglobalization(地球規模化、拡大化を意味する英語)の傾向のなかでのコミュニティの変容も見落としてはならない。すなわち国境を越えた、地球レベルの世界コミュニティの出現が問題となっている。これは、国際連盟などを基礎にした共同化のことだが、現在ではまだ、「理論上」の「願望」というに近い。それと同時に、村や町あるいは地域を範囲とするコミュニティも、それぞれ拡大化の動きをみせているのである。
[二宮哲雄]
『M・ウェーバー著、濱島朗訳『家産制と封建制』(1957・みすず書房)』▽『住谷一彦著『共同体の史的構造論――比較経済社会学的試論』(1963・有斐閣)』▽『二宮哲雄著『日本農村の社会学』(1967・誠信書房)』▽『R・M・マッキーヴァー著、中久郎・松本通晴監訳『コミュニティ』(1975・ミネルヴァ書房)』▽『園田恭一著『現代コミュニティ論』(1978・東京大学出版会)』▽『二宮哲雄他編著『都市・農村コミュニティ――社会学の理論と実証』(1985・御茶の水書房)』▽『倉田和四生著『都市コミュニティ論』(1985・法律文化社)』▽『蓮見音彦・奥田道大編『21世紀日本のネオ・コミュニティ』(1993・東京大学出版会)』▽『西村豁通・竹中恵美子・中西洋編著『個人と共同体の社会科学――近代における社会と人間』(1996・ミネルヴァ書房)』▽『K・マルクス著、手島正毅訳『資本主義的生産に先行する諸形態』(大月書店・国民文庫)』▽『大塚久雄著『共同体の基礎理論』(岩波現代文庫)』
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…しかしなかでも,送り手と受け手の間に教養,体験,関心などの違いでコードにずれがあったり(世代間ギャップや異文化接触など),憎悪や不信があったり(信頼度credibilityギャップ)すると,それが障壁barrierとなり,コミュニケーションの成立を阻害する。
【コミュニケーションの変質】
近代以前の人間は,風俗習慣,言語,宗教,思想,道徳などの領域にそれぞれ絶対優勢コードのある狭い生活環境(コミュニティcommunity,ドイツ語でゲマインシャフトGemeinschaft)の中で生活していた。身分や性や年齢などの違いで併存競合コードはいつもあったが,反対抵抗コードは異端,一揆,侵略などの形でごくまれに一時的,部分的に生じたにすぎない。…
…コミュニティという語は,(1)原始共同体,村落共同体というように歴史学的概念として使われることが最も多いが,(2)社会学的概念としても使われる。(1)については〈共同体〉の項目を参照されたい。ここでは地域社会を分析,記述する用語として規範的かつ積極的意味を込めて用いられた社会学的概念について述べる。しかし,(1)と(2)の間に共通性のあることも見逃せない。それを抽出することによって,より高い抽象度をもったコミュニティまたは共同体という用語の意味内容ばかりでなく,コミュニティ(共同体)がいかなる条件に支えられて生み出されるかという点についても理解を深めることができる。…
…森林でも草原でも河川でも海岸でもよい。いや,家の庭でも団地の周りでも公園でもがまんしよう。そこに生えている植物の種類はただ一つではあるまい。小さい下生えや雑草がいくつかは少なくとも存在するはずだ。その葉を食べ,花にみつを吸いにくる昆虫もいよう。鳥たちもときにはやってきて虫を食ったりしているかもしれない。土を少々掘り返してみれば,ミミズなどのうごめくこともあろう。目を凝らして見れば,長さ1mm程度の小さい動物はたいてい見つかるはずである。…
…これに対して原始共産制は,人類史の初期の社会状態に対する後代の理論的構成物であるが,次のような点で共産主義の諸原則を実現しているとされる。すなわち(1)搾取の余地のない生産力の低位を前提とし,(2)食糧・道具・武器の,自然の供給源であり住居でもある大地を,人間集団が共同で占拠し外敵に対して防衛するという意味での〈共有〉を基礎とし,(3)経済の自然的社会性(貨幣関係を媒介しない共同労働と直接消費)が,(4)諸個人の共同体への埋没(個人的人間の未成熟)によって実現している。それは人類が定着経済(牧畜,農耕)を開始する以前(これまでの人類史の大部分)にあたる。…
…コミュニティという語は,(1)原始共同体,村落共同体というように歴史学的概念として使われることが最も多いが,(2)社会学的概念としても使われる。(1)については〈共同体〉の項目を参照されたい。…
…〈村落〉および〈共同体〉の概念は,社会学,経済学,歴史学,農学などの分野で,それぞれ多様な含意をもって用いられるので,村落共同体を一義的に規定することはきわめて困難である。しかし,近代以前の社会をおおっている共同組織のうちで,およそ次のような特徴がある場合を村落共同体と呼んでいるといってよい。…
…このほか,村はずれにはこうした権利・義務をもたないいわゆる〈小屋住農〉や新参の移住者が住みついた事例も多いが,彼らは原則として〈むら〉の構成員ではなかった。これを要するに,古いしきたりとして歴史的に形成された共同体的な諸規制が,〈むら〉本来の構成員の団体意識を高める役割を果たしたのであり,領主による恣意的な収奪,とりわけ伝統的に共有地であるはずの入会地への領主の侵害などに抵抗する自治の法理,つまり〈良き旧き法〉を死守すべきだとする意識が,すでにそこに根強く育成され潜在していたのである。16世紀に勃発するドイツ農民戦争の背景も,あるいはスイスに今も残る村落自治の伝統も,この事情を無視しては考えられない。…
※「共同体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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