日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンガクウナギ」の意味・わかりやすい解説
タンガクウナギ
たんがくうなぎ / 単顎鰻
onejaw gulper
硬骨魚綱ウナギ目タンガクウナギ科に属する海水魚の総称。およそ15種が太平洋と大西洋に分布するが、いずれの種も大変珍しい。体はやや側扁(そくへん)し、細長いウナギ形で、後端でとがる。口は大きい。上顎(じょうがく)の骨がないので、単顎の名前がついた。頭の前方部の骨が著しく変形して大きな牙(きば)のように口内へ突き出す。牙の根元に腺(せん)組織があり、毒ヘビの牙と毒腺を思わせる。目は非常に小さく退化的である。腹腔の後部が袋状に飛び出し、そこに胃の後端が納まる。胸びれが小さい膜状で、鰭条(きじょう)を欠く。全長は16センチメートルほどにしかならない。全長6センチメートルで成熟する。水深5400メートルの海底から表層近くまでで獲れているが、ほとんどは2000メートル以深にすむ。日本からはオザワタンガクウナギが1個体のみ、南西諸島の南方海域の水深1600~2000メートルから報告されている。この種は頭が短く、頭骨長は全長のおよそ5.5%しかない。吻(ふん)は短くて鈍い。牙の背面はわずかに凸形。背びれ96軟条、臀(しり)びれ66軟条であることなどで他種と区別できる。
[尼岡邦夫]