日本大百科全書(ニッポニカ) 「オザワタンガクウナギ」の意味・わかりやすい解説
オザワタンガクウナギ
おざわたんがくうなぎ / 小澤単顎鰻
Ozawa onejaw gulper
[学] Monognathus ozawai
硬骨魚綱ウナギ目タンガクウナギ科に属する海水魚。本科をフクロウナギ科、ヤバネウナギ科およびフウセンウナギ科とともに、ウナギ目とは別目のフウセンウナギ目とする研究者もいる。本種は南西諸島南方海域のみに分布するが、本科魚類は世界の海域から1属15種ほどが知られている。体は細長く、側扁(そくへん)する。腹部は膨らみ、尾部は後方に向かって細くなる。頭はきわめて小さく、吻(ふん)は短くて丸い。目は著しく小さくて、退化的である。吻の下に頭骨の前部が変形してできた牙(きば)(rostral fang)がほとんどまっすぐに口中に突出する。上顎の骨はないことから、本科の和名はこの特徴に由来する。腹腔(ふくこう)の後部が飛び出し、腹腔袋(abdominal pouch)を形成する。両鼻孔(びこう)は牙と目の間にある。肛門(こうもん)は腹腔の右側に開口する。背びれは頭部近くから、臀(しり)びれは肛門の後方から始まり、体の後端に達する。胸びれは小さく退化的である。肛門と臀びれの始部との間に7個の筋節がある。腹椎骨(ふくついこつ)はさまざまな高さの縦長の長方形、尾椎骨は横長の長方形で背方に3本、腹方に2本の突起がある。体には、33番目の筋節の上に薄い黒色素胞があり、体の腹側に褐色の色素が散らばり、そして退化したあごの端に濃い点があるが、それ以外はまったく色素がない。水深1600メートル以浅から中層トロールで1個体(体長65センチメートル)がとれたことがあるが、正確な生息水深は不明。胃には消化された甲殻類が詰まっていた。牙の基部に腺(せん)があり、そこから牙の先端まで管が通る。この構造は毒蛇の牙に似ていることから、これは毒腺で、大きな甲殻類を捕まえるのに役だっていると考えられる。学名のM. ozawaiおよび和名の「オザワ」は、この魚類を発見した魚類研究者・小澤貴和(おざわたかかず)(1941― )に献名された。
[尼岡邦夫 2019年6月18日]