化学辞典 第2版 「ターフェルの式」の解説
ターフェルの式
ターフェルノシキ
Tafel's equation
水素電極反応について,水素過電圧ηと電流密度iとの間に次の関係が成立することが,J. Tafel(1905年)により実験的に見いだされた.
η = a + blog i (a,bは定数)
定数bはターフェル勾配(Tafel slope)とよばれ,電極反応の重要な特性値である.水素電極反応では,bはほとんどの金属について0.12 V である.いま,η = 0のときの電流密度を i0 とすると,
となる.ここで,i0 は交換電流密度とよばれる.電極反応論によると,電荷移動過程(放電過程)が律速する場合,過電圧の大きい範囲(η ≫ RT/nF)でターフェルの関係が成立し,ターフェル定数a,bは,次式で表される.
ここで,nは電荷数,Fはファラデー定数,αは移動係数0 < α < 1,Rは気体定数,Tは絶対温度である.上式でαを0.5とすると常温でb = 0.12 V となり,実験結果と一致する.ηとlog iの比例関係は,水素電極反応以外の多くの場合にも成立し,現在では,この関係を一般にターフェルの式とよんでいる.また,η~log i線図の直線部分をη = 0に外挿して i0(混成電位系の場合は腐食電流)を求める方法を,ターフェル外挿法(Tafel's extrapolation method)とよぶ.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報