過電圧(読み)カデンアツ

化学辞典 第2版「過電圧」の解説

過電圧
カデンアツ
overvoltage, overpotential

電極反応が進行しているとき,電極電位とその反応の可逆電位の差を過電圧とよび,通常ηで表す.過電圧はアノード反応について正,カソード反応について負にとる.過電圧は電流を流す駆動力であるが,逆の見方をすれば,電流の界面通過により電極がηだけ分極されたともいえる.電流密度と過電圧の関係を表す式としてターフェルの式が古くから知られている.同じ電流密度で比較して過電圧が大きいことは反応速度が遅いことに対応するので,電極反応速度が遅い(あるいは交換電流密度が小さい)場合に,過電圧の大きい反応,あるいは電極という表現も使われる.とくに水素電極反応では,交換電流密度のかわりに水素過電圧で記述されることが多い.電極反応は,溶液内拡散,電荷移動過程(放電過程),表面反応などの素反応から成り立っているが,その各素反応に因する過電圧を拡散過電圧,電荷移動過電圧(活性化過電圧),反応過電圧などとよぶ.

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日本大百科全書(ニッポニカ)「過電圧」の解説

過電圧
かでんあつ
overvoltage

電気分解を行っているときの正()極または負(陰)極の電位が、それぞれの極が平衡にあるときの電位に比べて、どれだけ正または負になっているか、すなわち、平衡電位に比べてどれだけ余分に電位がかかっているかの大きさを過電圧という。

 過電圧は、それの原因となる分極の種類により、活性化過電圧と濃度過電圧に分けられる。適当な電気分解装置を用いて、片方だけの極の活性化過電圧ηaと流れる電流iとの関係を調べると、多くの場合、ターフェルJulius Tafel(1862―1918)の関係式ηaablogiが成立する。各種金属陰極上、水素発生時の過電圧を水素過電圧、陽極上、酸素発生時の過電圧を酸素過電圧とよぶ。

[戸田源治郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「過電圧」の解説

過電圧
かでんあつ
overpotential; overvoltage

電気化学反応 (電解反応または電池反応) の電極電位の理論値と実際の電位の差をいう。単位ボルトで表わされる。その内容によって,活性化過電圧 (水素過電圧がよく研究されている) ,濃度過電圧,抵抗過電圧に分けられる。電解または電池反応では条件により大きさが異なる。電気化学反応の過電圧に相当する電気的エネルギーは,として消費される。電解の場合はできるだけ過電圧を低くし,省エネルギーに努め,金属腐食ではできるだけ過電圧を高くして錆びないようにする。

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百科事典マイペディア「過電圧」の解説

過電圧【かでんあつ】

溶液中のイオンが電極に析出する速度と,逆に電極から溶液中にイオンの溶出する速度が釣り合った時,その界面に現れる電位を平衡電位または可逆電位という。実際に電解が行われている時の電極電位とこの平衡電位との差を過電圧という。

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世界大百科事典 第2版「過電圧」の解説

かでんあつ【過電圧 overvoltage】

電池系に電流を流して電気分解を進行させるには,電池を構成している各電極系の電極電位を平衡時の値(平衡電極電位)からずらさなければならない。すなわち,電極系の平衡を破らねばならない。電流Iが流れているときの電極電位と平衡電極電位との差を,その電流における過電圧という。電極系の平衡を破るには次のような現象に打ち勝つだけのエネルギーを加える必要があり,それらの原因に応じて過電圧を次のように分類することができる。

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世界大百科事典内の過電圧の言及

【異常電圧】より

…送配電線に発生する,正常な運転電圧以外の電圧をいう。運転電圧より高いものと低いものがあるが,高いものを過電圧と呼んでいる。過電圧には大別して雷サージ,開閉サージ,短時間過電圧の3種類がある。…

※「過電圧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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