化学辞典 第2版 「水素過電圧」の解説
水素過電圧
スイソカデンアツ
hydrogen overvoltage
水素電極反応(水素発生)の過電圧.水素(および酸素)の発生電位が電極金属によって異なるという現象は,W.A. Caspari(1899年)により系統的に研究された.そして,気泡が観察できる最小電位と,可逆電位(平衡電位)との差を過電圧と名づけた.現在,過電圧は,電極反応が起こっているときの電極電位とその反応の可逆電極電位の差と定義されている.水素電極反応についても,気泡が発生する点の過電圧はあいまいなので,一般には一定電流密度における過電圧の値で水素電極反応の速度を比較することがよく行われる.水素過電圧ηと電流密度iの間に,次に示すターフェルの式が成立することは古くから知られている.
η = a + blog i,(a,bは定数)
bの値は,ほとんどの金属で0.12 V である.水素過電圧が大きい金属では,ターフェルの式でaの値が大きいことに対応し,また交換電流密度が小さいことに対応する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報